ドラコラムその1
1.「妖怪なんていない」としつこく言わせた理由。〜否定された存在の発見〜

この漫画を描いてて少し迷ったこと
それはありとあらゆるキャラに「妖怪なんていない」とかなり強く言い切っていることです。
当然読者としては妖怪の世界にドラえもん達が向かうことは分かっているわけだし
更に紫・藍の姿も見せているので「妖怪なんていない」というのは
少なくともこの漫画の中では見当違いではあるのですが
ちょっと自分が危惧していたのは「作者はZUNの世界観を否定している」と受け取られることでした。
特に最初のほうのドラえもん達の会話は幻想郷世界について
かなりズバっと言ってしまっているので
東方の世界観をバカにしているのでは?と思われた人もひょっとしているかもしれませんので
何故このような描写になったのか説明したいと思います。

まず、このへんの現実世界での幻想郷の扱いについては
東方妖々夢のマニュアル、幻想郷風土記を参照にしています。

以下引用。

  そんな妖怪世界の幻想郷だが、今でも、たまに道に迷った人間  
  が紛れ込むこともある。                   
  彼らは、外の世界では「神隠し」と呼ばれているようだ。    

  多くの人間は幻想郷から戻ることは出来ないが、運良く元の世  
  界に戻れると、彼らは神隠しのことを山のように質問されるに  
  違いない。                         
  その彼らは口々にこう言い、頭がおかしくなったのだと、誰に  
  も信じてもらえないのだ。                  

   「桃源郷を見た」だとか「蓬莱山に行った」のだと。     

  ここを訪れた人間は、この地を伝説の楽園だと思うらしい。   
  一見、見た目は無何有郷でありつつ、全てがここに棲む生き物  
  のために機能した文明も兼ね添えていた。そう、ここは人間界  
  の人間から見て、紛れも無く楽園だったのだ。       

引用終わり

最初の博士の記者会見はここから来ています。
かなり迫力のある(ドラえもんにしては)スタートなのは
「大長編ドラえもんで東方? ギャグでしょ?」という読者の予想を裏切りたかったのと
映画っぽいプロローグの演出にこだわりたかったからです。

大長編ドラは「否定された存在の発見」という要素に大きな感動があると考えています。
ドラ「日本に恐竜なんていねーよ」→のび「フタバスズキリュウだ!!」
出木杉「魔境?ねーよ」→出木杉「ヘビー・スモーカーズ・フォレスト!!」
スネ夫「恐竜?絶滅しただろ」→のび「地下で生きてた!!」
隠された世界の探求こそが冒険心をくすぐると思っているのです。

そして、東方について詳しく知っている人には分かるのですが
幻想郷の結界は2つあり、そのうちのひとつに「博麗大結界」というものがあり
外の世界の「非常識」を幻想郷の「常識」の側に置くというものであるというものです。
つまり、幻想郷が維持されているのには妖怪の存在が否定されているという要素が必要なのです。

まとめると今回、徹底的に幻想郷の存在を否定する描写を入れたのは
大長編ドラえもんとして、そして、東方projectの世界観を効果的に表現するために
必要だったことをご理解ください。

詳しく東方の世界観を知りたい方は全国の書店で発売されている「東方求聞史紀」を
拝読されることをおすすめします。(ただし、公式設定集としては意図的に曖昧な記述が多い)


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