中央奥が由布市の野焼き事故で焼けた現場。手前は塚原地区
死者四人を出した由布市湯布院町塚原の野焼き事故は、過疎・高齢化に悩む県内他地区でも人ごとではない。地域の共有財産を守ってきたコミュニティーの衰退に伴い、野焼きの人手不足は慢性化している。同時に、そのノウハウなど、地域文化の伝承が困難になっている。
野焼きは、畜産農家が採草などを目的に組織的に管理する共同牧野や、地区ごとの小規模共有地などでしている。粗飼料確保の草地改良に取り組む「共同利用牧野」は、現在県内に六十四カ所。県畜産振興課は「十五年ほど前は百カ所ほどあった」と、管理放棄が増えた実態を説明する。
事故があった由布市の共有地でも昨年、地区の総会で「日当が五千円かかるし、高齢化で参加者も減った。野焼きをやめたらどうか」との声があった。しかし、古里の景観を維持したいとする声もあり、継続を決めたという。
同じ悩みを抱える竹田市久住町の稲葉牧野組合は「もはや助っ人なしではやれない」と六、七年前からボランティアを受け入れている。多くの観光客が訪れる九重町飯田高原では十数年前、三集落にまたがる実行委員会を結成。選ばれた担い手が広域的にカバーする方式に改めた。
一つ間違えば惨事となる野焼きは、地域コミュニティーに根差した住民の連携が鍵。地域特有の地形や自然条件を熟知していることが前提で、関係者は「豊富な経験、消防との綿密な連携など、十分な安全確保が必要だ」と強調する。だが、現実には非農家や地域外の経験が乏しい人たちが携わる傾向が強まっている。
事故があった由布市湯布院町塚原地区は、人口三百六十二人のうち百十九人が六十五歳以上の高齢者。いっそう深刻化する過疎・高齢化。それでも、牧草確保など暮らしのため、そして農山村の景観維持のため、野焼きを守らなければならない地元住民。野焼きの伝承は、地域再生とも絡む難しい問題といえそうだ。
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