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不法入国:「脱北親族」装い 入管法違反容疑で中国人4人、協力の日本人妻逮捕

 北朝鮮を脱出して帰国した「日本人妻」が中国人男女を親族と偽装して不法入国させたなどとして大阪、千葉両府県警合同捜査本部は8日、日本人妻で無職、斎藤博子容疑者(67)=東京都板橋区=と中国人男女ら4人の計5人を出入国管理法違反(不法入国など)容疑で逮捕した。

 日本国籍を持つ脱北帰国者の配偶者や子らの入国を認める入管制度を悪用した手口で、府警によると脱北帰国者の親族を装った不法入国の摘発は初めて。

 他の逮捕者は▽中国人で無職、自称金孝月(47)=同▽同、池青松(46)=同=の両容疑者と30~40代の中国人男女。斎藤容疑者は「脱北の際、世話になった中国人に言われるままにやった」と容疑を認めているという。

 逮捕容疑では斎藤容疑者は06年7月、金容疑者がめいになりすまし不法入国する手助けをしたとされる。金容疑者ら中国人男女4人は06~09年、斎藤容疑者の親族名などを自分の名と偽って入国するなどしたという。

 捜査本部によると斎藤容疑者は61年「帰還事業」で在日朝鮮人の夫や長女と北朝鮮に渡った後、子ども5人を出産。01年2月に脱北し8月、長女になりすました中国人の女と帰国した。その後、この女は出入国を繰り返していたという。

 斎藤容疑者は北朝鮮人ブローカーの手助けで脱北し、中国人の女とその夫の池容疑者に紹介され、かくまわれた。その際、池容疑者らから斎藤容疑者の親族を偽装し日本に入国することを持ちかけられた。

 本当の長女とめいは既に死亡、次男は北朝鮮にいるという。

 ◇脱北帰国者170人、親族確認は口頭

 北朝鮮への帰還事業は、日朝の赤十字が祖国建設などを目的に1959~84年実施、在日朝鮮人ら計約9万3000人が北朝鮮に渡った。

 うち日本人妻は約1800人。経済状況悪化などで90年代後半から脱北者が急増、日本帰国は約170人に上るとされる。

 日本政府は、脱北者のうち日本国籍を持つ日本人には無条件で帰国を認め、配偶者や子らについても在留資格を与えている。支援団体によると、帰国者が残してきた親族を呼び寄せるケースが多い。その際、北朝鮮から身元証明を取り寄せることは難しく、外務省が北朝鮮での生活や家族構成を口頭で確認する程度。

 専門家からは「なりすまし」を懸念する声も出ていた。

 ◇昨年10月取材に「戸籍取り寄せ」--斎藤容疑者

 斎藤博子容疑者は08年10月、東京都内の自宅で毎日新聞の取材に応じ、脱北の経緯を証言していた。その際、中国人がなりすましたとされる長女について「日本から戸籍を取り寄せ、長女も連れて帰った」などと話すとともに、中国国内でのブローカーの存在も示唆していた。斎藤容疑者は福井県出身で19歳の時、在日朝鮮人の夫と結婚。北朝鮮には、帰国事業に応じた夫と当時1歳の長女の計3人で61年に渡った。夫は93年に病気で亡くなったという。

 斎藤容疑者によると98年に「中国に行って(日本の)家族に電話してみないか」と声をかけてきた男性がいた。誘いに乗り、中朝国境の川を渡って越境。中国・長春に行き電話した。その際、男性に「ここまでの旅費はどうするんだ」と要求され、実家から代金代わりに背広などを送ってもらったという。

 その後、斎藤容疑者は北朝鮮に戻ったが、01年、再び男性がやって来て同様に誘われ、中国国内から電話したところ、つながらなかったという。すると男性は「では、日本に行ってみないか」と持ちかけてきた。家族を残すことになるが「日本に帰れるなんて考えたこともなかったが、迷った末、帰ることに決めた」という。

 脱北の経緯について「中国で商売をしている日本人を紹介され、日本から戸籍を取り寄せてもらった。そこに長女も載っていたので、男性に北朝鮮から連れて来てもらった」などと説明していた。

毎日新聞 2009年3月9日 北海道朝刊

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