「これが私の世間遺産」
■なつかしく面白い「自分だけの文化財」
鹿児島のNPOメンバー 東川隆太郎さん
鹿児島で、独自に「世間遺産」を掘り起こしている特定非営利活動法人(NPO法人)「まちづくり地域フォーラム・かごしま探検の会」専務の東川隆太郎さん(34)。県内の変わったトイレや、何げない景勝地などを探し出し、自ら世間遺産に認定している。東川さんに、世間遺産とつき合う楽しみを聞いた。
世間遺産は私の造語と思っていたんですが、この名前を使い地域資源を見つめる人が各地にいるようです。同志が多く、心強いですね。
日常生活で、ぼんやりとしか認識していないもの、当たり前すぎて見過ごしているもの。それらの価値や意味を追求すると、意外な発見や驚きにつながることがあります。それが世間遺産です。これまでに公園の植え込みにたたずむ桜島噴火記念碑やシラス台地に設けられたトンネル、廃線の鉄路の下にある井戸などを「認定」してきました。文化財のように保全や管理が十分にされてはいませんが、地域の歴史や特性を伝える物語があふれています。
世間遺産の活用は3つあると考えます。まず観光。そもそも観光とは、意味や価値があるモノに人が集まるものです。世間遺産が観光コースの1つになってもいいのでは。
次に教育。身近な所に世間遺産があれば、子どもたちは自分の地域に興味を持ち、学びます。そして次世代に伝えようとします。そこに教育効果が生まれるはずです。
そして街づくり。現在の街づくりはハードよりソフトが重要視されています。新たな変なハコモノを建てず、今ある変なモノ、つまり世間遺産を街の魅力にしてゆく。実現すれば素晴らしいですね。
世間遺産を見つけるまなざしを持ち、それをどうにか生かしたいと思う気持ちは郷土への愛です。なつかしくもあり面白くもあり意味深くもある「自分だけの文化財」を、ぜひ足元で探してみてください。 (談)
【写真説明】鹿児島市役所からわずか数百メートルの場所に残る路地を巡る東川隆太郎さん
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