ふるさとは愛キャラクターをして語らしむ

■当地キャラ 各地で愛きょう

 ふるさと再発見の世間遺産探しの旅を続けるうち、あちこちで見つけたのが“ご当地キャラクター”だ。すでにある風物や景観の遺産をユーモアたっぷりに演出したり、土地の人でさえ忘れがちな文化をアピールする、いわば世間遺産の応援団。かわいさが身上で、これから続々増える?



なつきちゃん 福岡・旧稲築町

なつきちゃん  おかっぱ頭にアヒルのような唇。つぶらな瞳が愛くるしい。福岡県旧稲築(いなつき)町(現嘉麻市)が1991年、町の河童(かっぱ)伝説と町名にちなんで作ったマスコットキャラクターが「なつきちゃん」だ。  遠賀川の豊かな流れにはぐくまれてきた同町には、秋祭りの「山野の楽」、毎夏子どもが水神に相撲を奉納する「黒田のまさめ相撲」など、河童にちなむ伝統行事がある。なつきちゃんは、町制50周年の際、河童伝説を地域づくりに活用しようと生まれた。

 公共施設の看板にあしらわれているほか、遠賀川沿いの土手や役場近くなどには石像も並ぶ。合併で町名はなくなったが、旧町民の河童への愛着は健在だ。



天草タコ 熊本・有明地域

天草タコ  熊本県天草市の有明地域は、合併前の旧有明町時代から、特産のタコで地域おこしに取り組む。有明海沿岸の国道を「タコ街道」と命名。キャラクター化も活発で、リアルな巨大モニュメントが街道沿いに建設されたり携帯電話ストラップが作られたりしている。

 旧有明町が沖合のタコに注目したのは3年前。天草下島に官公庁や観光地が集まるため、地元の天草上島は素通りされた。そこでタコを丸ごと煮込んだステーキなど、さまざまなアイデアを基にタコの名物を生み出した。同市有明支所のタコ担当職員木村等さん(29)は「特徴のなかった地域が生まれ変わった」と話している。



おしくらマン 佐賀・武雄市

おしくらマン  おしくらマンは2001年、子どもたちの冬の遊び「おしくらまんじゅう」を競技化しようと、佐賀県武雄市が「全日本美味暮(おしくら)まんじゅう選手権」を始める際、市職員の大島拓也さん(31)が考案したキャラクターだ。肉質日本一とされる市特産の「若楠(わかくす)ポーク」にちなんだ、豚のマスコットだ。

 毎年開催される同選手権で着ぐるみが活躍しているほか、04年秋には地元の人形師江口勇三郎氏がキャラクター人形を制作。テレビ番組のキャラクター選手権に出場したことから全国区に名乗りを上げ、昨年4月には東京の東急ハンズ渋谷店が人形を販売、話題を呼んだ。



ビッキー 佐賀・江北町

ビッキー  町の名よりも、町内にあるJR肥前山口駅の方が「なぜ佐賀県なのに山口なの」と有名な江北町。何とか知名度を上げようと生み出されたのがカエルのキャラクター「ビッキー」だ。ビッキーはカエルを意味する方言「びっき」が語源。同町は鉄道や国道の分岐点となる「佐賀県のへそ」を自任。町内に多いカエルにへそを付け、1994年、町のキャラクターとして誕生した。

 「ビッキー音頭」もCD化。「無事にカエル」に引っかけ、お守り代わりにもなるキーホルダーなどグッズも続々登場。町内の御嶽山中腹にある桜山散策路にはビッキーをあしらった電飾板が設けられ、町のシンボルとなっている。



ほとめきちゃん 福岡・久留米市

ほとめきちゃん  久留米絣(がすり)をまとい、おたふくのような赤いほっぺにおちょぼ口。2005年末、福岡県久留米市中心部の商店街のキャラクターとして登場したのが「久留米ほとめきちゃん」だ。空き店舗の多い商店街のにぎわい再生のシンボルとして笑顔を振りまいている。

 「ほとめき」は地元の方言で「おもてなし」の意。喫茶・雑貨店「風のおくりもの」の赤司貴代子店長(49)が「元気がない街を明るくしたい」と、お年寄りらでつくるまちづくり団体「久留米ほとめき通りイキイキ会」代表の平島フサヱさん(72)に相談。平島さんがデザインした。壁掛けや置物などのグッズや「ほとめきちゃん音頭」も作られている。



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