ふるさとは不思議人間をして語らしむ

■ピカピカに輝く泥団子を作る助教授がいる

土が光る不思議 すごいよね。 大分大教育福祉科学部 田中洋さん

大分大教育福祉科学部 田中洋さん  子供のころ作った、あの泥団子を根気よく磨くと光り出すのをご存じか。ガラス玉のように顔さえ映ることを。その輝きに大分大教育福祉科学部の田中洋・助教授(49)が魅せられて5年近く。遊びを教育に生かすべく、ひたすら磨き続けている。

 「初めてテレビで見たとき、大人も子供も夢中で作っていた。どうして?」。材料は水と土だけ。それに磨くための布。衣服のジャージーでもいい。

 作り始めて3カ月間、泥団子は光らなかった。表面を指先で丹念にこすり、乾かしながら固い粘土質にする。あせって力を入れると割れる。何十個も失敗を重ね、授業で学生と作った際に、やっと光沢が出た。

 だが、また割れた。「磨きの最後の最後でジャージーが引っ掛かったようでした」。奥は思ったより深い。そして、次の1個でようやく満足できる“作品”ができた。「光る瞬間、それまでの苦労が全部吹き飛んだ」。

 鍛錬を重ね、団子に赤や青のチョークで色をつけられるほどの実力に。最近は保育士を目指す学生を指導する立場から、泥団子づくりを幼児教育で活用することも考えている。「どこにでもある土が光る不思議。子供が自然に興味を持つきっかけになる。これからは地域分布や地域によって異なる作り方を研究したい」。たかが、されどの泥団子なのである。

【写真説明】大分大教育福祉科学部 田中洋さん

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