ふるさとは怪モニュメントをして語らしむ
■悲哀トイレに込めた新幹線の夢
長崎・佐々町の河川公園
「ややっ! なぜ、あんなところに新幹線が?」。ここは、長崎県佐々町の河川公園。「?」と首をかしげるのは、のどかな田園風景に実物大、本物そっくりの新幹線先頭車両が、どーんと鎮座しているからだ。
実は、この新幹線、コンクリート造りの公衆便所で、形も大きさも「グランドひかり」(100系新幹線)そっくり。入り口に張ってある「殿方用」「御婦人用」のプレートには、なぜか、グリーン車の「4つ葉マーク」も付いている。
1990年に設置されたこの新幹線トイレ。もとをたどれば、消えた1つの夢の跡なのである。その夢とは、長崎新幹線佐世保ルートの夢。トイレが建設された当時、新幹線が佐世保を通るルートで建設されることは既定方針だった。当時の町長は「新幹線早期実現は悲願だった。そのPRを含め、子どもたちの喜ぶ施設をと、新幹線型にした」と話していた。
時代は大きく変わった。長崎新幹線佐世保ルートの夢は消滅し、スローガンを失った「スローガン建築」が残った。16年たった今。車体は薄汚れてしまったが、子どもたちに人気のあることがせめてもの救いである。
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