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■ピンチ!クジラの骨で出来た鳥居

ピンチ!クジラの骨で出来た鳥居

長崎・新上五島町の海童神社

 緑の木々が茂る神社の前に、真っ白なアーチがそびえ立っている。長崎県新上五島町有川郷の海童(かいどう)神社にあるのは、全国でも珍しい、クジラのあごの骨で出来た鳥居だ。

 かつて捕鯨で栄えた同地域には、今でもクジラを見張った小屋が建てられた鯨見山や鯨供養塔など、当時の生活をうかがわせる建造物などが残る。

 海童神社は1620年、海難事故が相次いだとき、「海童神」と名乗る神のお告げで建てられた。郷土史を調査・研究する鯨賓館(げいひんかん)ミュージアム(同町)によると、当時から骨でできた鳥居があったかどうかは定かではないが、今の鳥居は“三代目”。1973年に東シナ海で捕獲したナガスクジラの骨だという。

 だが、鯨賓館の学芸員は「鳥居が老朽化したら、新たな鳥居を迎えるのは難しい」と頭を抱える。日本が商業捕鯨から撤退して約20年。ナガスクジラは2005年、ようやく調査捕鯨の対象になったものの、許された年間の捕獲頭数は十頭のみ。捕鯨で栄えたことを象徴する鳥居は、危機を迎えている。

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