高温多湿でのサッカーこそが異常
【金子達仁】2009年03月19日

 史上最悪のW杯はどの大会か。わたしの答えは決まっている。94年W杯米国大会が最悪だった。なぜか。サッカーをプレーするにはあまりにも暑すぎたからである。あの大会は、アジア勢の健闘が光った大会でもあったが、見方を変えれば、殺人的な暑さが欧州勢をボロボロにしてしまった大会だった。なにしろ、ピッチ上の温度が50度近くに及ぶことさえあったのだから。

 暑さは、サッカーの質を低下させる。間違いなく、それも大幅に低下させる。2002年のW杯日韓大会が質として決して高いものにはならなかった原因のひとつにも、暑さが関係しているとわたしは思う。実際、日本の気候に辟易(へきえき)とし、オフレコの場で「二度と日本ではプレーしたくない」と漏らした選手も少なくない。

 では、寒さは質を落とすだろうか。

 そんなことはない。

 では、日本の寒さは世界的にも屈指の厳しさだろうか。

 そんなこともない。明日のスコットランド、グラスゴーの気温は最高気温が10度、最低気温が2度だという。最高気温7度、最低気温1度が予想される札幌よりはいくぶん暖かいものの、それぞれ16度、8度が予想される山形よりは寒い。

 では、スコットランドではいまサッカーをやっていないだろうか。観客は寒さを敬遠してテレビ観戦を決め込んでいるだろうか。

 もうひとつ。いま、地球は寒冷化の道を進んでいるのか、それとも温暖化が問題となっているのか。

 繰り返すが、暑さはサッカーの質を低下させる。退屈なサッカーは、観客をスタジアムから遠ざける。空虚なスタジアムは、人気の低下をさらに加速させる。

 それでも、日本のサッカーは春夏開催に固執しなければならないのだろうか。

 わたしは、犬飼会長の提案する秋冬制への移行は正論だと思うが、どうも、この議論は協会と Jリーグの確執問題に面白半分ですり替えられてしまっている感がある。

 プロスポーツである以上、観客に快適な環境を提供しなければならないのは言うまでもない。だが、大前提として、プロらしい試合を見せることこそが、プロの使命だとわたしは思う。

 資金面などでいま以上の苦労を背負い込むことになる北国のクラブの反発はわかる。だが、高温多湿な中でのサッカーこそが異常だという認識は、絶対に忘れないでいただきたい。秋冬制に移行できない理由が資金面の問題でしかないのであれば、Jリーグは文化を語る資格を失うことになる。利潤を第一目的とした文化などありえないのだから。(スポーツライター)

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