あれから、私は、翔とは接客業に専念し、1週間に1度の割合で、瑠美さんと逢って、3人で一緒に出かけるようになっていた。
大分、瑠美さんは心の余裕を取り戻して、色んなファッションを見せてくれて、逢うのがすごく楽しみになっていた。
ダンサー系やマリン系、色っぽい格好、リゾート系も似合うけれど、女性らしいワンピースも凄く似合っていた。
メイクもそれなりに変えているから、素敵に見えるんだな。。。
ワンパターンの私とは大違い。
私は、もちろん、あのリゾート系の服を着て、出勤するようになった。
瑠美さんは私の憧れになっていた。
最初はいかがわしいだけかもしれないと思ったけれど、接してみると凄く優しくて、お洒落好きでファッション好きなんだなって分かった。
それ以上に本当は私のカフェにも愛情があって、だから、私にリゾートの格好をさせてくれるようになったんだし。
言わないけれど、きっと瑠美さんは私の店を気に入ってくれたんだ。
嬉しいことだけれど、同時に切なさが増す。
もし、私をプロデュースし終えたら、遠いどこかへ消えてしまうのではないかと。
それくらいに、儚い笑顔だったから。
そして、クリスマスを目前に、瑠美さんが誕生日を迎えた。
瑠美さんのお気に入りのお店で、バースデーパーティー。
けど、結局、私のお店。
瑠美さんに、こんなこぢんまりしたカフェがあうのが不思議だった。
もっとにぎやかなところがあうのに。
瑠美さんは今、クリスマスのダンスイベントに向けて、色々レッスンに余念がなくて忙しいという。
「もう翔に何か負けないから・・・」
「そのほうが、瑠美らしいよ。」
瑠美さんは、涙をためながら、翔に抱きつく。
こんな光景は初めてだ。
私、帰った方がいいのかな。
それくらいに、二人が遠くて・・・
私だって、泣きたいのに・・・・泣けない。
だけど、翔、もしかしたら、瑠美さんといい仲になるのかもしれない。
そしたら、私はきっと笑って見送ってあげようと思う。
だって、もともと翔と瑠美さんは幼馴染って言うけれどそうでもなさそうだし。
そうじゃなきゃ、こんな因果を持たないでしょ。
私より、瑠美さんの方が、女らしいよ、やっぱり。
私は切ないキモチを隠して、そっと二人の抱擁を見守っていた。
今日は瑠美さんのお誕生会なんだもん、・・・
だから笑っててあげなくちゃ。
私は大丈夫だから、ね。
私も、もしもの時に、・・・耐えられるように。
こういうのを、美男美女カップルって言うのかな。
でも、どうして、私、泣けないんだろう。
そして、瑠美さんはどうして、泣いちゃったんだろう。
帰り際、瑠美さんと別れてから、すごくきつそうな翔の顔。
どうしたのか、よく分からなかった。
−俺、・・・瑠美のこと・・・・やばい・・・・
お前がこんな遠くに行くとは、まさか思わなかった。
本当に、決意したんだな・・・
もうそろそろ、お互い、卒業なんだな。
そして、見上げた空に、
ちらちらと白い天使が舞い降りてきていた。でも、2人はそれに気づいてなかった。
私は、もう、こらえきれなくなってた。
「翔。。。」
私は、誰もいない路地で、翔に抱きついて泣いてた。
なぜか、泣きたくて・・・
翔は、黙って抱きしめてくれていた。
抱きしめながら、翔は優しい声音で言う。
「瞳、、、、なぁ、空見てみろよ」
そっと空を見上げてみると・・・
真っ白な雪。
今年、初雪。
もうすぐ、白い季節。
翔が、翔が、白い天使を連れてきてくれた。
2人は、そのまましばらく外で、舞い降りてくる雪を眺めていた。
今は、只何も考えずに、
あなたのそばにいたい。
この白い雪のように
ずっとあなたに白い気持ちを送り続けたい。
白い雪よ
ずっと・・・
融けないで。
手のひらに
融けて行く
真っ白なかたまり。
いつまでも
ずっと
見つめ続けていてほしい。