雑誌記事ファーストリテイリングが990円ジーンズ、柳井流、超低価の勝算東洋経済オンライン3月17日(火) 16時13分配信 / 経済 - 経済総合
この超低価格品を売るのは、消費不況の中で独り勝ちを続けるユニクロ業態ではない。同社傘下の衣料店「ジーユー」だ。ユニクロのジーンズは通常価格3990円、4990円の2タイプだが、ジーユーはその4分の1という安さだ。年間50万本の販売を目指すという。 ジーユーは2006年10月に展開を始めた超低価格帯の専用ブランド。「価格を気にせず“自由”にファッションを楽しむ」というのが由来だ。 当初はダイエーの店舗内を中心に出店し、5年で売上高1000億円という大きな目標を掲げた。ところが直近の08年8月期末の売上高は約40億円止まりで営業赤字。店舗も56店(09年1月末)にとどまる。不振の理由は「知名度がないうえ、これだという商品もなかった」(ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長)。 だが「ユニクロとの連携を密にし、企画力や素材調達力が向上した」(ジーユーを管轄するGOVリテイリングの中嶋修一社長)。さらにユニクロ業態と同じように、商品点数を800から約300に絞り込んだ。これらの結果、09年8月第1四半期は既存店が2ケタ増収となったという。 超低価格ジーンズは、この勢いに弾みをつける起爆剤。ジーユーはパーカなど約8割の商品で、従来ユニクロの3分の2程度だった価格を半分以下に引き下げ、明確にユニクロ業態と差別化する。これにより13年8月期には売上高500億円、200店の目標を新たに掲げた。これはユニクロ業態の現段階での売上高のおよそ1割に充たる。ジーユーは一部のユニクロや、傘下のシューズ不採算店の業態転換の受け皿としても出店を進める。 ●価格自壊のおそれも 柳井会長は「50万本は軽く売れると思う。ユニクロのジーンズは国産の生地を使用するなど最高品質。一方、ジーユーの生地は中国産。(価格に十分見合う)そこそこの品質。ユニクロとのすみ分けは十分可能」と自信満々だ。 本当に自社間競合は起きないのか。ある証券アナリストは「自社でやらなければ、いずれ他社が超低価格戦略を仕掛ける」と理解を示す。一方で「超低価格戦略を進めることで、長期的にユニクロの販売価格が下に引っ張られるおそれがある」と警鐘も鳴らす。 大黒柱のユニクロ業態の高い収益力を維持したまま、超低価格市場をとれるか。リスクと隣あわせの柳井流の成長戦略が再び幕を開けた。 (福井 純 =週刊東洋経済) 【関連記事】 ・ ファーストリテイリング、「ユニクロ」が女性向け商品で攻勢へ ・ 流通界の新王者・ユニクロ、フリースを超えた!ヒートテック革命の衝撃 ・ デフレ再来――高額ブランド品にソッポ、100円バーガーなど「安さ」に消費が集中 ・ やっと日本代表になれた。だったら次はアジア代表――柳井正・ファーストリテイリング会長兼社長 ・ 再挑戦するユニクロ――フリースブームから8年、V字回復に見る自信
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