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ここから本文エリア 輸血ミス死亡 名前確認せず採血か?2009年03月14日
国立病院機構熊本医療センターの救急外来で起きた輸血ミスによる死亡事故は、採血時の確認不十分など基本的なミスが原因と見られる。しかし、人手不足など厳しい救急医療の現状も背景にあり、一人の医師や看護師の責任に帰せられない問題がある。(岡田将平) ミスは、血液型を判定するための採血の際に起きた。担当の内科医は、採血用の試験管に張るため、女性の名前を書いたラベルを印刷機で印字した。しかし、すぐに出てこなかったため、再度印刷の操作をし、結果的に名前のラベルは2枚印刷された。 採血に手間取り、通常とは違う動脈注射で採血。血液は女性の名前のラベルが張られた試験管に入れられた。その間に、別の男性患者が運ばれ、近くの別の部屋のベッドで女性とほぼ同時に採血が行われた。 その際、2枚目のラベルが張られた試験管に誤って男性の血液が入れられ、そのまま検査にかけられたらしい。本来、採血のための試験管は患者のベッド脇に置かれるようになっているが、女性の名前の張られた試験管がなぜ別の患者のところにあったかは分からないという。 医療センターの事故防止マニュアルでは、採血前に患者の名前や容器の確認をすることになっているが、行われなかったようだ。 病院側は記者会見で「一番基本的な確認作業を怠っていた」と述べ、謝罪した。輸血ミスと死亡との間の因果関係ははっきりしないが、病院側は「重大な影響を与えたと思う」と説明した。 病院からの報告を受けた熊本市保健所地域医療課は「今後再発防止も含め詳細な報告書の提出を待ち、必要なら現場調査も検討したい」と話している。 熊本医療センターは、県内で熊本赤十字病院と並び、重篤な患者を受け入れる「三次救急医療機関」。「患者を断らない」を方針に掲げ、07年度には県内の救急車出動件数の1割を超す7802件を受け入れた。「最後のとりで」との評価を受ける。 しかし、軽症患者が運ばれてくるケースも増え、現場の負担は大きくなっている。多い時で1時間に10台来ることもあり、重症患者が相次ぐと、医師や看護師は息つく暇なく対応しなければならない。ぎりぎりで安全を保っているのが実情とも言える。 今回も、死亡した女性を含め患者は収容できるぎりぎりの8人おり、医師8人と看護師5人で対応していた。中には複数の患者を同時に診ていたスタッフもいたようだ。 県内の救急医療関係者は「熊本医療センターの救急外来の患者数は年々増え、態勢が十分には追いついていなかった。バランスが崩れ、このようなミスがいつ起きてもおかしくない状況だった」と指摘する。 同センターに限らず、県内の救急医療には、要員、設備、地域バランスなど様々な面で課題がある。先の関係者は「熊本医療センターが、この事故を受けてもし、『断らない』という方針をやめれば、熊本でも、『受け入れ拒否』問題が必ず出るだろう」と懸念している。
マイタウン熊本
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