2009年3月18日22時50分
香川県立中央病院(高松市)の体外受精卵の取り違え問題で、人工妊娠中絶した20代の女性患者と夫が、同病院を開設している県に慰謝料など損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が18日、高松地裁であった。県側は、担当医(61)の過失により別人の受精卵を女性に移植した可能性を認めた上で、約2200万円の請求額が高額だとして請求棄却を求めた。森実将人裁判長は和解協議を提案し、双方ともこれに同意した。
訴状によると、女性側は受精卵の移植から約2カ月後の昨年11月、担当医から他の患者のものと取り違えた可能性があるとの説明を受け、「病院から早期の中絶を勧められた」と主張している。
この日、提出された答弁書によると、県側は「羊水検査をしてDNAによる親子鑑定後に中絶する方法もあるが、(検査は妊娠15週以降になるため)母体に与える影響が大きい」と女性側に説明。双方の話し合いの結果、「早期に中絶する方法が良いということになった」とした。
また、取り違えは、故意に近い過失があったとする「重過失」にはあたらないと主張。請求額については、中絶やお産をめぐる他の訴訟で認められた慰謝料が100万〜450万円であることを挙げ、「金額的な評価について争う」とした。女性側は「待ち望んだ妊娠が中絶という結果になったことなど、精神的苦痛の慰謝には2千万円でも決して高いとはいえない」とした。
閉廷後、女性と夫は「医師を信頼して受診したのにこういう結果になって残念です。県の答弁書を見て、自分たちが何か悪いことをしたのかとの思いにとらわれている。今は多くのことを考えることができません」との談話を出した。