「夫にほかの男性との交際を隠したいと思った」。埼玉県川口市で平成20年11月3日夕、酒に酔って乗用車を運転し一家3人を死亡させるなどの事故を起こしたとして、自動車運転過失致死などの罪に問われた主婦、芝塚直美被告(34)は、さいたま地裁で開かれた公判の被告人質問で、事故の発端となった心情を自らの言葉で供述した。
芝塚被告が被告人質問で証言台に立ったのは12日。クリーム色のフリースに黒のズボン姿。茶色に染めた髪の頭頂部が黒くなり、勾留(こうりゅう)期間が長くなっていることを物語っていた。
検察側は2月9日の初公判の冒頭陳述で、芝塚被告が事故の約1時間前まで、越谷市内で交際中の男性と酒を飲んでいたことや、事故後の検査で血液1ミリリットル当たり2・2ミリグラムのアルコールが検出され、泥酔状態だったことなどを明らかにしている。
弁護人からの被告人質問で、芝塚被告の生活の一端がかいま見えた。毎朝、夫と子供を送り出した後、男性の元へ出掛けて昼間から飲酒、家族が帰宅する夕方前に帰る生活だった。
検察官は、芝塚被告が3人死亡の事故の直前、別の追突事故を起こし逃げたことについて追及した。
検察官「逃げた理由は」
被告「夫に男の人のことがばれるのが怖かった」
検察官「ばれたらどうなる」
被告「もう子供とは会わせてもらえないし、離婚だと思った」
また、検察官は事故後に芝塚被告が飲酒検知を拒否した点について指摘。「なぜ取り調べで飲酒を隠したのか」と問うと、「誰と飲んだとか夫にばれちゃうと思った。ばれないとは思わなかったが、隠したいと思った」と供述した。
裁判官は芝塚被告が飲酒運転を繰り返していた点についてただした。
裁判官「男性と会っても酒を飲まなければよかったのでは」
被告「酒を飲まないと○○さん(男性の名前)が不機嫌になった」
裁判官「帰ってしまえばいいのでは」
被告「断り切れなかった」
裁判官「理由は」
被告「けんかになるのが嫌だったし、怒ると怖かった」
裁判官「怒られるのが怖かっただけ」
被告「自分でも1、2杯ならという気があった」
裁判官は最後に、「交通ルールを守る決意はあったのか」と厳しく追及。芝塚被告は「欠けていたと思う」とした。
19日に論告求刑と最終弁論が行われ結審する。(西尾美穂子)
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