名古屋市千種区の派遣社員、磯谷利恵(いそがいりえ)さん(当時31歳)拉致・殺害事件で、強盗殺人などの罪に問われた闇サイト仲間の3被告のうち2被告に死刑を言い渡した18日の名古屋地裁判決は「インターネットで集まった犯罪者による犯罪である点が、極刑をもって臨む大きな根拠の一つ」と強調した。新たな犯罪に歯止めをかけようとする司法判断が、被害者1人の事件としては異例の2人死刑という判決につながった。
死刑判決を受けた神田司被告(38)の弁護人は18日、「闇サイトを介して形成された犯罪集団の危険性や模倣性を不当に重く量刑事情として解釈している」として名古屋高裁に控訴した。また堀慶末(よしとも)被告(33)の弁護人も取材に「近日控訴する」と話した。近藤宏子裁判長は自首をした川岸健治被告(42)には無期懲役(求刑・死刑)を言い渡している。
日本弁護士連合会によると、最高裁が83年に死刑の判断基準を示して以降、被害者1人の事件で死刑が確定したのは25件。うち同一事件で2被告の死刑が確定したのは1件しかない。
判決は事件について「インターネット上の掲示板を通じて集まり、犯罪を計画・実行した点が特色」と指摘。「3被告は集団の力をあてにして、楽をして金もうけをしようとした」と非難した。さらに「匿名性が高く、発覚が困難。凶悪化・巧妙化しやすく、模倣性も高い」とネット犯罪の危険性を強調。「一般予防の必要性も高い」と社会的な影響を重視した。
インターネット社会に詳しい神戸大大学院の森井昌克教授(情報通信工学)は判決について「同種犯罪を抑止する効果があり、ネットの悪用に警鐘を鳴らす意味もある。だがネットはただの道具。どういう人間がどう使うかという問題で、一律の規制は難しい」と話している。【秋山信一】
毎日新聞 2009年3月19日 2時09分(最終更新 3月19日 2時09分)