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きょうの社説 2009年3月18日
◎五輪招致へ国会決議 閉塞感破る盛り上がりを
二〇一六年夏季五輪の東京招致をめざす国会決議が衆院本会議で議決され、参院も十八
日に議決する運びとなった。民主党が慎重姿勢を取り続けたため、決議の採択が遅れていたが、政治がようやく明確な意思を示したこの機を逃さず、国民の支持を一気に広げていきたい。世界同時不況が深刻さを増し、日本の景気悪化にも歯止めがかからない状況での招致活 動である。多額の財政負担を心配する声が出るのも分からなくはないが、閉塞感が漂う今だからこそ、それを打ち破るような夢のある目標がほしい。五輪の開催準備はまさに、これ以上ないほどの景気刺激策になろう。北陸にとっても二〇一四年度末までに北陸新幹線金沢開業が予定され、新幹線を利用しての首都圏との交流がもたらす経済効果は計り知れない。 十月二日の開催都市決定まで残り半年である。招致運動を国挙げて盛り上げるには、東 京の開催メリットに焦点を当てるだけでなく、地方も含めて日本全体でその意義を共有する必要がある。 二〇一六年夏季五輪は東京、シカゴ(米)、マドリード(スペイン)、リオデジャネイ ロ(ブラジル)の四都市が二月に開催計画書を国際オリンピック委員会に提出し、招致レースが本格化した。東京が一歩リードとの声が挙がる一方、他の都市よりも世論の支持率が低く、招致のかぎを握る国民的な盛り上がりが課題となっていた。 開催計画書では、東京は二酸化炭素を大幅削減する「世界初のカーボンマイナス五輪」 を掲げている。政府が景気回復や雇用創出策として日本版「グリーン・ニューディール」構想を今後具体化していくなかで、五輪の理念は先端の環境技術や省エネ技術で日本が世界をリードするための象徴的な意味を持つのではないか。五輪の開催準備を景気浮揚策のなかで明確に位置づける視点が大事である。 五輪は若い世代に夢を与え、スポーツへの関心を高める。子どもたちの運動不足や体力 低下が指摘されるなか、それを改善していくための目標にもなろう。そうした開催のプラス効果を理解し、招致を何としても実現させたい。
◎北陸に「星」続々 加賀藩の観光力生かそう
フランスのミシュラン・ガイドブック観光版日本編が発売され、北陸から、兼六園と五
箇山が最高ランクの三つ星を獲得し、金沢や能登からも星付きの観光地が多数紹介されたことは、北陸が、日本海側では群を抜く観光の集積地であることを示したものと言える。それと同時に、兼六園や城下町金沢の街並みは言うに及ばず、藩政期に火薬の原料とな る塩硝の生産地であった五箇山のように、北陸に広がる加賀藩の歴史文化遺産が、国際的な視点から見ても、訪れる価値のある「観光力」を備えていることが証明されたと言っていいのではないか。 ミシュランの星を勲章に、「塩硝の道」を通して新たに脚光を浴びている金沢と五箇山 の周遊はもちろん、東海北陸自動車道でアクセスが容易になった同じ三つ星の高山(岐阜県)や松本城(長野県)などと結んだ黄金のコースを提案することもできるだろう。郷土の遺産に誇りを持ち、地域間交流を深めるとともに、国内外に多くのファンを作りたい。 今回の日本編は、二年前に発行された簡易版を充実させた「本編」とも言えるものだ。 地域的には、娯楽施設が充実している東京や、名所旧跡の宝庫である京都が中心だが、評価が低かった日本海側では、金沢エリアの施設や景勝地が突出した数の「星」を獲得しており、二つ星の金沢21世紀美術館を除けば、長町や茶屋街など城下町の風情が色濃く残っているところがほとんどである。 「加賀藩」が洋の東西を問わず人を引きつける力を持っている証明であろう。無電柱化 の面的展開や辰巳用水の国史跡指定への取り組みを通して「歴史都市」の品格を高め、二つ星の金沢そのものの評価を、さらに押し上げたい。 ミシュランの格付けは、選考基準が独特で、選ばれてしかるべきところはまだまだある との声もある。今後も改訂されるだろうが、県内のもう一つの星の集積地である能登や、白山を中心とした加賀の観光地も、加賀藩との関連づけも含め、多くの人に訴える切り口を見つけ発信してもらいたい。
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