介護職の医療技術・知識の必要性を強調−厚労省・宮島老健局長
厚生労働省の宮島俊彦老健局長は、3月14日に開かれた日本介護経営学会のシンポジウムで、「介護報酬と介護経営」をテーマに講演した。この中で、介護福祉士は基礎的な医療ケアができ、ケアマネジャーは医療についての知識を持つことが必須の条件になると強調した。
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12年度介護報酬改定に向け、医療との連携を−全国地域医業研究会 宮島局長は来年度の介護報酬改定について、「一定の勤続年数や常勤職員が多い場合を評価する。人材に定着してもらい、介護現場の落ち着きを取り戻すもの」と説明した。
また、昨年11月に最終報告を出した社会保障国民会議でのシミュレーションを基に、医療・介護分野で今後必要となるマンパワーについて説明。「急性期医療を確立し、今の医療崩壊を防ぐ。患者は早く病院を出ることになるため、在宅や介護ケアにつなげることが必要。受け皿は施設というより、居住系施設や在宅を想定している」と述べた上で、2025年には看護職員が07年と比べさらに約70万人必要になるほか、介護職員は07年の117万人の倍以上の255万人が必要との試算を紹介した。
■消費税次第で「分権型」介護保険制度も
宮島局長は、3年後の介護報酬と診療報酬の同時改定について、「消費税の議論も政治日程に上ってくるかもしれない状況で、個々の問題をどう扱うかが議論になる」とした。
財源の確保について、介護保険料と後期高齢者医療制度を合わせると、月に1万円を超える自治体も出てくることなどから、保険料はどこまで負担できるのかが議論になるとした。
宮島局長は「消費税の行方によって、財源問題は大きく様相を変えていく。消費税が社会保障目的税となった場合は、すべて国に行くのか、今まで通り地方にも配分するのかという議論は、現在のところ抽象的なレベルにとどまっている」と指摘した。
その上で、「国の分の消費税を年金に回し、地方分は全部介護に回して、介護は国庫負担でなくなるという選択もあり得る。そうすると財源の面から見て、かなり分権型の介護保険を構想しなければならなくなる」と述べた。
■フィンランドの介護教育制度を紹介
また宮島局長は、看護師、介護福祉士の教育体制について「いずれ看護師4年制、介護士3年制に移行していくのが少し先の目標」と述べ、看護師は医師との関係でより独立性の高い内容に従事し、介護福祉士は基礎的な医療ケアを行うのが一つの方向性になるとした。
宮島局長は、介護の教育カリキュラムとして「一番気に入っている」というフィンランドの制度を紹介した。基礎学習の2年間で「リハビリ援助」「介護と看護」「成長への指導と援助」の3つのテーマについて学んだ上で、3年時には高齢者、障害者、看護・介護専門課程、リハビリ専門課程などの分野を選択すると説明。「保育士、准看護師、介護福祉士、歯科衛生士もケアに携わる基礎的職種と考えられている。障害者の施設から、ホームヘルパーになるといった柔軟性がある制度」と指摘した。
また、「在宅ケアは『多職種共同』といわれているが、医療と福祉ではベースが違うと言っていてはうまくいかない。今後、介護福祉士は基礎的な医療ケアができ、ケアマネジャーは医療についての知識を持つことが必須の条件になるのではないか」と述べた。
一方、日本では有料老人ホームや高齢者専用賃貸住宅(高専賃)など居住系施設が少ないと指摘。今後も特養や老健は一定数を整備する必要があるが、圧倒的に足りないのが「高齢者の集合住宅」とし、国土交通省との間で、集合住宅の1階部分にデイサービスや訪問看護ステーションを置き、2階から上をバリアフリーの住宅にするといった計画を進めているとした。都会での高齢化が急速に進む中、「居住系施設を整備し、訪問診療、訪問看護、訪問介護が外からサービスを入れる形にならざるを得ない」と説明した。
宮島局長はこのほか、訪問看護ステーションが減っていることに危機感を示し、「複数の訪問看護ステーションを束ね、事務処理や機材管理などを集約する訪問看護センターを来年度から実験的に整備していく」と説明した。
訪問サービスの在り方についても、「訪問看護などでも、もう少し時間が短くてもいいのではないか」と指摘した。
また、病院ではドクターや看護師、理学療法士や作業療法士などがITを利用して、患者のカルテを参照し、患者へのサービスやケアの履歴を確認できることを紹介し、「在宅ケアでも同様の仕組みが必要となるのではないか」と述べた。
今後の介護報酬上の評価についても、「介護のサービスの質を評価して、それに対価を支払うという仕組みに戻していかなければならない」と述べた。
更新:2009/03/17 23:06 キャリアブレイン
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