現在位置:
  1. asahi.com
  2. 社説

社説

アサヒ・コム プレミアムなら過去の朝日新聞社説が最大3か月分ご覧になれます。(詳しくはこちら)

政治資金規正法―これで「公開」と言えるか

 準大手ゼネコン、西松建設の違法献金事件で秘書が逮捕された民主党の小沢代表は「私はみなさんからの浄財をすべて公開している」と言い、やましいところはないと胸を張る。

 看板に偽りはありやなしや。その一端をパソコンでのぞいてみよう。

 まず、総務省のホームページで「白書・報告書」→「政治資金収支報告書」→「平成19年9月14日公表」と進む。「資金管理団体」の項目で「リ」を開けば小沢氏の「陸山会」がある。この29ページ目に、検察が西松建設のダミーだと容疑を向ける「新政治問題研究会」の100万円の寄付が出てくる。

 このページには計約1億円の寄付が並ぶが、その100万円以外はすべて民主党本部と、小沢氏が代表である岩手県第4区総支部、小沢一郎東京後援会、小沢一郎政経研究会からのもの。名前だけでどんな団体か分かりにくいのは「新政治問題研究会」だけだ。

 それなのに、その正体はせんさくしないし、知らなかったという小沢氏の説明が不思議に思えてくる。

 では次に「民主党岩手県第4区総支部」を探してみよう。岩手県庁のホームページで「岩手県報・県法規集」→「岩手県報」→「過去の県報」→「平成20年9月発行分」→「9月19日」→「収支報告書の要旨」と開いていく。51ページ目に、この総支部の名がある。

 個人献金もあるが、目立つのは、土木・建設会社からの寄付の多さだ。県内の業者はもちろん、東京や大阪が本社の企業からの寄付も並んでいる。

 このように、政治資金をめぐる公開情報はパソコンでも入手は可能だ。

 ただ、政治家の財布をすべて調べようと思ったら、いくつもある政治団体の名前や報告先、公表の日付など相当の予備知識が必要だし、手間もかかる。国民がその全容を知りたいと思ってもなかなか厄介なのが現状だ。

 企業や団体からの政治献金は、政官業の癒着や腐敗の温床になりがちだ。だが、検察の捜査には証拠や時効の壁がある。一罰百戒とならざるを得ない場合もあるだろうし、そこに不公平感がつきまとう場合もあるだろう。報道機関の取材にも限界はある。

 であれば、ここは主権者である国民自身の出番ではないか。政治資金規正法による公開制度は一朝一夕にできたわけではない。不正が発覚するたび、世論が政党や政治家の尻をたたくようにして、少しずつ前に進んできたものだ。国民が日々、政党や政治家を監視するためにさらに活用されていい。

 そのためにも、政治家の関係団体を漏れなく、もっと容易に一覧できる制度への改善を与野党に求めたい。やましいことが本当にないのなら、捜査当局や報道機関に痛くもない腹を探られるより、きっぱり、国民にすべてをさらしたほうが気が楽ではないのか。

政治資金規正法―企業献金禁止に踏み出せ

 政治資金は、透明であればそれでいいわけではない。もらってはいけないカネもある。献金の妥当性も厳しく問われなければならない。

 これが西松建設の違法献金事件が問いかけたもう一つのポイントである。

 カネを出したと疑われている西松建設は、大規模な公共事業を多く受注する会社だ。そうした企業からの献金は、せんじつめれば、工事費用として支払われる税金の一部が、様々な思惑を帯びながら政治家に還流するということだ。

 これはよくない、公共事業受注企業からの献金を禁じるべきだとの声が、民主党から出てきた。

 公共事業の受注企業から選挙資金の提供を受けてはいけないという規定は、すでに公職選挙法にある。選挙以外の政治活動ならOKという理屈にどれだけの人が納得するだろうか。

 だが、驚いたことに、当の小沢氏がきのうの会見で、企業・団体献金の全面禁止を打ち出した。公共事業を受注しているかどうかをどう調べるのか。政府や自治体に物品を納入している企業もそこに含めるのか。などなどの難問があるから、やるなら全面禁止でという主張である。

 自民党の中枢にいた時から巨額の企業献金を集めてきた小沢氏だけに、耳を疑う人も多いかもしれない。

 そもそも公共事業受注企業からの献金禁止は、03年の衆院選に向けて民主党がマニフェストに掲げた政策である。そこからさらに踏み出した発言だ。事件で被った打撃を少しでも挽回(ばん・かい)したいという危機感からなのか。企業にも政治活動の自由があると言って企業献金を是認している麻生首相との違いを際立たせる狙いなのか。

 しかし、代表がここまで言った以上、民主党は与党も巻き込んで、全面禁止に向けた政治資金規正法の改正に具体的に動いてはどうだろう。

 企業からの献金をすべて悪とは決めつけられない。個人献金があまり定着していない日本社会の事情、税制などの問題もある。だが、企業は直接の見返りを求め、政治家がそれに応える。そうした事件は枚挙にいとまがない。

 だからこそ、政治家個人は企業献金を受けられないようにし、政党だけに絞る法改正が行われた。実際は尻抜けである。政党支部が全国に9千以上も乱立し、国会議員や地方議員らの「財布」がわりになっている。

 共産党を除く各党は、税金から毎年計300億円以上の政党助成を受けている。腐敗を断ち切るための公費負担なのに、それを忘れたかのように毎年巨額の献金が企業や労組、政治団体から政党や政治家に流れ込んでいる。

 国民の政治不信の根底に、この問題がある。企業・団体献金をなくすという政治改革の原点に立ち戻るべきだ。

PR情報