景気回復へのビジョンは描けるのだろうか。麻生太郎首相は多年度をにらんだ追加経済対策の検討を与党に指示。十六日には各界有識者から経済危機脱出に向けたアイデアを聞く「経済危機克服のための有識者会合」が始まった。
追加経済対策は、二〇〇八年度の二回の補正予算と〇九年度予算の「三段ロケット」に続き、麻生内閣にとって「四段目」の経済対策である。過去には、バブル崩壊後の橋本、小渕政権が十兆円を超える大型の経済対策を行っているが、複数年にまたがる対策は異例だ。
先に開かれた二十カ国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議に出席した与謝野馨財務相は、追加経済対策に関連し、「(約五百兆円の)国内総生産(GDP)の2%を超える」と述べ、十兆円を超える財政出動を表明した。さらに経済界からは「二十五兆円」「二年で三十兆円」と大規模対策を求める声が上がっているという。
その軸になるとみられているのが、公共事業だ。空港、港湾、高速道路整備のほか、新幹線や羽田空港再拡張の計画を前倒し。またワークシェアリング支援、雇用調整助成金の拡充などに加え、地球温暖化対策を景気浮揚に結びつける日本版「グリーン・ニューディール」構想として太陽光発電導入推進策も盛り込まれる見通しだ。
有識者会合では金融、環境など十前後のテーマごとに首相や関係閣僚と有識者が協議し「霞が関や永田町にないアイデア」を対策に反映させるという。
ばらまきに終わらない内容と財政規模以上に難問なのが財源である。景気悪化で税収は激減している。「霞が関埋蔵金」と呼ばれる財政投融資特別会計の積立金も使える余地は少ない。定額給付金や基礎年金の国庫負担などに回すためだ。公共事業は建設国債で対応しても、残りは赤字国債に頼ることになり、将来に向けた国の財政運営は一段と厳しくなろう。
追加対策は今月中に全体像をまとめ、麻生首相が四月の第二回金融サミットで各国に概要を説明。策定後、政府は直ちに財源を裏付ける〇九年度補正予算案の編成作業に入るという。だが、財界などには「選挙目当てが露骨で、編成まで行き着くか」と不安視する声もある。
麻生首相は〇九年度補正予算の成立を念頭に、早期解散に否定的な発言をしたが、中長期的な成長につながる有効な策を打ち出すことができるか。見識と判断力が問われよう。
国際宇宙ステーション(ISS)で、日本人として初めて約三カ月半の長期滞在に挑む若田光一さん搭乗のスペースシャトル「ディスカバリー」が、米フロリダ州のケネディ宇宙センターから打ち上げられた。「出張」から「単身赴任」の感覚へ、日本の有人宇宙活動は大きな節目を迎える。
米航空宇宙局(NASA)は当初、二月中旬の打ち上げを予定していた。ところが、燃料の圧力調整弁の異常などで延期が繰り返された。過去二回の飛行経験がある若田さんだけに、搭乗時の表情には余裕がうかがえたが、待ちに待った大役に心に期するものはさぞ強かろう。
若田さんは、得意のロボットアーム操作などでISSの維持管理に当たる。日本の実験棟「きぼう」についても、六月下旬には帰還便のシャトルで運ばれる船外実験装置を取り付け、建設決定から二十年あまりで完成にこぎ着ける。
注目されるのが、無重力など特有の環境を利用した実験の数々だ。宇宙での長期滞在が人体に及ぼす影響の実験もその一つ。若田さんは地上の骨粗しょう症薬が宇宙での骨量減少を抑えるかどうか、自ら服用してデータを提供するという。従来の二週間前後の短期飛行では不可能だった領域の扉を開く。
独自の有人宇宙活動を視野に据える日本にとって、自国の飛行士が長期滞在して巨大有人宇宙施設の運用ノウハウを得、人体への影響などを体験することは貴重な財産となる。国民に宇宙での生活の実感を近づけることにもつながろう。
若田さんに続いて、野口聡一、古川聡両宇宙飛行士の長期滞在も計画されている。ISSの前途には不透明さを伴うが、若田さんの活躍と成果で弾みをつけたい。
(2009年3月17日掲載)