ミニチュア・ゲームとは?
Little things please great minds (sometimes...)
ミニチュア・ゲームとは、要するにこどもが人形の兵隊さんで遊ぶのを、現実のシミュレーションとなるようにきちんとルールを決めたものです。ミニチュアの地形の上で兵士などを動かし、距離を測って射撃の効果を計算して戦うという遊び。ゲーム盤がなく卓上をそのまま使うことから、Tabletop gameとも呼ばれます。欧米ではH.G.Wellsの「Little Wars」などから長い歴史があり、1960年代からのボード・シミュレーション・ゲーム興隆の背景にもなっています。作家Tom
Clancyが出世作「レッド・オクトーバーを追え」「レッド・ストーム作戦発動」の戦闘シーンをHarpoonシステムで検証したというのも有名な話です。「Civilization」で有名なSid
Meierも、若いころ南北戦争のミニチュア・ゲームに魅せられていたそうです。またロールプレイングゲームも、実はミニチュア・ゲームから発展していったものです。有名なDungeons & Dragonsは最初、Gary Gygaxが作ったChaimailという個人戦闘ルールのサプリメントでした。
ボードゲームのデザイナーでは、GDWのFrank Chadwick、Battleline/AHのCraig Taylorがミニチュア出身者の双璧でしょう。「Squad
Leader」のJohn Hillもミニチュア・ルールを作っています。しかし日本では(かく言う私もそうですが)ボードゲームからシミュレーション趣味に入った人が多いので、ミニチュア・ゲームの歴史や現状がもうひとつ理解されていないようです。最近は日本でも小さな塗装済み完成モデルが人気のようですが、ファンタジーものを除いて日本語の情報はほとんどないので、ヒストリカルものを中心に詳しく書いてみることにします。
ボードゲームに比較したルールの特徴
1. 欧米でも、ミニチュア・ルール単独ではなかなか商売になりません。最初はミニチュアを売るメーカーが、ミニチュアの販売促進の意味でルールをごく安い値段で売ったりしていました。このように商業的でない分、ルールが素直です。つまり、ボードゲームに比べてデザイナーの自己顕示やメーカーの商業的論理に毒されることが少なく、プレイヤーがプレイヤーのために純粋に改良を重ねてきた遊びという印象があります。
2. また、ボードゲームではルールを大きく変更するとマップやユニットなどのコンポーネントも改訂しなくてはなりません。しかしミニチュア・ゲームでは、地形やフィギュアはそのままで使いまわしできます。だからその分ルールの進化が早く進んでいきます。さらに、同じスケールのルールならシナリオや編成のデータも共有できて便利です。実際、ルールを問わない汎用シナリオ集というものも売られています。
3. 同じ理由で製作のコストが安いため、マイナーテーマの作品が出しやすい。箱入りのボードゲームと違い、とりあえずルールだけ印刷(またはネット配布)すればいいので、市販のボードゲームでは考えられない珍しいテーマのものがあります。ルールを通じて歴史の理解を深めるのも楽しみのひとつであり、この点では商売から離れたところのほうが豊かです。
4. もともと兵士の人形を使う遊びだったので、初期には抽象性の少ない個人戦闘級(Skirmishと言います)がほとんどでした。しかし小規模な戦闘を繰り返すだけではじきに飽きてしまう。そこで複数の戦闘を関連づけて楽しむキャンペーン・システムが生まれ、それが作戦級のボードゲームを生むひとつの基盤となっていきました。たとえば有名なTITAN(AH)というボードゲームは、そもそもファンタジー・ミニチュアの戦闘ルールで遊んでいたグループが自作したキャンペーン・システムを元にしています。
そうしてボードゲームで作戦級が発達していくと、それを見てミニチュアでも大きな会戦や作戦面を再現しようという動きが出てきました。今で