私はあれから、翔の一言が気になって気になって仕方なかった。
翔は毎回のように遊びに来てくれて、毎回のように手伝いをしてくれた。
翔は、本当はどうしたいの?
今のところあのショーパブと、私の店で、掛け持ち状態。
怒られないのだろうか。
「てかそんなこといちいち、仲間に言ってないし。俺が好きでやってることだから」
本当に、大丈夫なんだろうか。
だって、言ってないんでしょう?
仕事、こんなんで大丈夫なのかな?
確かに、心配しすぎなのは分かってはいるけど・・・
もう、2週間以上、この状態が続いてるから気になってる。
瑠美さんは、何もしなかったみたいで、何もなくてよかった。
やっぱり、いい人なのかもしれない。
悪い人ではないんだよきっと。
話せば分かってくれるんじゃない?
「いや、あいつは、計算してる。
何があるか分からない。
まだ初期の段階だからあれだけど」
店長から聞かされた話だと、如何わしい雰囲気で、何が起こるかわからなかったという。
しかも、接客以外、何も話しかける気が起きなかったらしい。
一番高いのを注文してったという。
それって、ここで有名になりたいとか?・・・
何か、そういうの分からないや・・・
でも、あの格好は似合ってたけど、瑠美さんがああいう服装するとは思わなかった。
「人間って、、、怖いな、どこで変わるかわからねぇ・・・本当に怖いな・・・」
「こないだは、ごめんなさい。今日は普通の服装で来ました」
瑠美さん!
普通って・・・私にしたら、ダンサー系の格好にしか見えないんですけど?
「やっと接客してるところに出会えたね。私も接客してくれる?」
そりゃぁ、お客さまだもの。
翔は、いつもなら、何しに来たんだとか言うのに、今日は、黙っていた。
「俺はノータッチ。まぁ。俺もするわ。一緒に頑張ろうぜ」
瑠美は、カウンターに陣取った。
瑠美もまた目立つので、他の女どもから注目の的だった。
「きれいですねぇ・・・翔さんのお友達だったっていう人でしょ?あの女の子より素敵ですよ。こないだもすっごくお似合いでした。女優さんになったらいいんじゃないですかぁ?」
「いやだ、瞳ちゃんの方が可愛いわよ。瞳ちゃんにもああいう服装してほしいくらいだもの。」
本当は嘘。そりゃぁ〜私のほうが、数倍も女らしいし?
できることなら、もう一度翔とやりたいけどそんなこと、許されないもんね。
だからこの女と今はコンビを組ませてやりたいのよ。
翔がいるんなら、私だってこの店で働きたいくらいだわよ。
だけど、私は今仕事の途中でよっただけだから、すぐ行かなくちゃいけないけど。
暇つぶしで悪いわね。
「フルーツパフェいただける?」
さすがお嬢様だ。パフェが大好きなんだ・・・
けど、こないだもそうだったけれど、
食べ方が本当に色っぽくて綺麗だったの。
食べ方は本当に憧れる。
「はい、フルーツパフェ一つですね。かしこまりました」
時間を確認しながらなので、忙しそう、なのかな。
「こないだは、ごめんなさいね。
どんな店なのか見に来たの。
私いろいろな情報を得ているから。
少なくとも翔からはもう連絡も何もないけれど・・・
翔は本当に冷たくなったわ。
あれから・・・
本当はもっと一緒にいれたらいいのにって思うのよ。
でもそうもいかない。
私が仕事忙しくて。
もう、その店の重役みたいなものだから。
それに、重役になると少しは自由になるから、こうやって飛び出して来れるのよ。
でも今の若い子って本当に色んなファッションが好きね。
あなたも、そういうファッションじゃなくてもっとカフェに似合うファッションでもしたらいいのに。
私がプロデュースしてさしあげますよ」
・・・こいつ!!!!!
でも少し、嬉しかった。
「ねぇ、いつが空いてらっしゃるの?・・・」
「いえ、今週いっぱいはちょっと・・・」
「そう・・・じゃぁ、いつがいいかしら・・・休みは取れないの?」
「シフトで休むことはできるんですけど・・・」
「仕事ばっかりじゃ息が詰まるでしょー?お洋服一緒に見に行きましょうよ。瞳ちゃんに似合うお洋服もあるから大丈夫よ。結構アジアン系が主なんだけど、あなたならアジアン系も似合うはずよ。そんなかっこじゃ、ただオフィスにいる人と変わらないじゃない・・・」
たまには、いい事を言うなぁ・・・そう思ったけど。
私もリゾート系の服装が気に入っていたけど、最近仕事が忙しくて買えなかった。
「このあとは・・・何時まで?」
「6時か6時半までです」
「そう、じゃぁまた迎えに来るわ。私もパフェ食べたら行かなくちゃいけないから。」
忙しそうだなぁ。。。
そして、パフェを食べ終えると颯爽とお店を後にしていった。
「翔、今日、瑠美さんがまた迎えに来るって。」
「行って来いよ」
「うん、」
反対しないんだ?
ちょっとびっくりした。
「あいつにもできることが見つかったんだろ。少し相手になってやってくれ」
私は、今日は、翔と離れて、瑠美と一緒にお買い物に行くことになった。
そして、時間通り瑠美さんは迎えに来てくれた。
「瞳ちゃん、お待たせ」
そして、私を乗せて、瑠美さんは自分の店に向かって車を走らせた。
何だか、私が想像していたよりも、あの店の傾向が強くて・・・
そっか、リゾート系ってこういうお店だったんだ。
それはまるで、バリ島とか、そっちの方をイメージさせるようなお店だった。
雑貨も多かったし、ジャスミンの匂いで店の中は充満していた。
「上はカフェバーになっていて、私、上でも働いているのよ。人が足りなくなるとね。お昼時とか。だから、あのカフェの情報はよく知っているの。私はこの辺で知らないカフェはないのよ、でも入ったのは此間がはじめて。さ、よかったら、好きなもの選んでね。私がコーディネートするから」
すごいかっこいい!!
ていうより、カフェそんなにしってるの?
凄く綺麗な笑顔、久々に見た気がする。
自信満々な笑顔、本当は大好きだったのに。
私は瞳ちゃんと出会わなかったら、何もできないまま終わって、このまま翔と離れ離れになるのはいや。
絶対にいや。
瞳ちゃんと一緒になれただけで嬉しいの。
きっとどこかに翔がいるから。
だからこの店に呼びたかったの。
翔、ありがとう。
とても素敵な服ばかりで私には選べなかった。
「瞳ちゃんだったら、はっきりした色のほうがいいよ。普段、淡い色よく着てるけど。」
そう言って出してきてくれたワンピースがとても素敵だった。
私も働きづめで、しかも習い事の勉強もしているから、お金がたまりにたまっちゃって、どうしようもなかった。服の1枚や2枚、、、いや、もっと買おうかな。でもアクセサリーも素敵なのばっかり。
アロマなお香もある。素敵・・・
「いいでしょう。瞳ちゃんはもっと世界広げたほうがいいと思うの。こういうの好きそうだなって思った。翔が好きならなおさらリゾート好きそうだって思った。」
「あ、私小さい頃に中国とか、タイとか行ってたらしいんですけど、よく覚えてないんですよ・・・」
「そんなに小さな頃に?」
私は、中国語とタイの言葉なら少し喋れたらしい。
1年間かそれくらい、過ごしたらしいんだけど、見覚えがなくて、写真でしか見たことがない。
「実家の父が、そういう取引をしてるんで、雑貨系の。」
そう。雑貨系なのよね。私はそれを知っているから、好きなんじゃないかなって思って誘ってみたの。
いい反応してくれる。ありがとう。
「気に入ったもの選んでね。今日は特別だから安くしておくわ」
私は、瑠美さんが選んでくれた2枚を、買うことにした。ちょっと瑠美さんの口車に乗るのもいいかもしれないと思った。
「よかったら、上のバーでちょっとお茶していかない?」
「いいんですか?」
「いいのよ、今日は特別なお客様がいらっしゃるって事で、用意してたんだから」
あれ?翔?
「あ、心配になってな・・・ごめん。大丈夫だって分かってたんだけど。ここまで車飛ばしてきた」
「翔、ごめんね、瞳さんちょっと貸してもらっちゃった」
「ああいいよ、瞳もいい息抜きになっただろ」
何だか、切なくなるね。
そんな顔しないでよ。
昔に、戻りたくなっちゃうじゃない、そんな優しい顔されたら。
やっぱり、翔は来てくれるんだね・・・
嬉しいような、切ないような・・・
私が悪いって、認めなきゃいけないようなものじゃないの。やめてよね
まだ私はそんな気にならないんだから。
まだ十分、瞳さんをちゃんとしてあげてないんだから。
確かに、仕事放り出してまで、翔に夢中になったのは悪いと思ってるわよ。
だからって、ねぇ・・・
仕事しろ何てばっかり言われてもねぇやる気にならないものなのよ。人間てうまくできてるんだから。
「さぁさぁ、瞳ちゃんは何がいい?」
「私は・・・どうしようかなぁ・・・アイスココナッツミルクティーとタコスプレートいただこうかな」
翔も同じらしい。今日は、もう疲れたから、カクテル系はやめにしようと思った。
「私もこれから、ここで夕ご飯にするところだったんだ。3人一緒ね。私も同じがいいわ。」
瑠美は本当に張り切っている。
お調子者って言葉が似合うくらいに。
何だかやっぱり可愛い。
憎めないような気がした。
本当に、あの格好も衝撃的だったけれど、瑠美はスタイルがよくて背が高くて綺麗だし、笑顔も凄くかわいらしいから、何でもよく似合う。
最初の頃の印象と変わらない。
あの悪魔のような復讐劇が、嘘みたいだった。
「翔、瞳ちゃん、これからもこの店に遊びに来てくれない?暇な時でいいから。二人で遊びに来ればいいじゃない。」
まだこいつは黙ってる気か?
翔に又怒りが差し込んできた。
「ああ、そうするよ」
店の人を前にして、下手な事は言えなかった。
こいつも商売上手だな。
知り合いを呼び込みあがって。
「俺も、昔からこの店にはよく出入りしてた。すげぇリゾートっぽい感じが漂ってて、お香とか昔から好きだったし、、、」
やっぱ翔は私と感覚が違う。
でも私は、今日、お香やアクセサリーも買っていたので、少しずつだけど、部屋の雰囲気をアジアンリゾート風にしてみようかなと思った。
「私、沖縄に修学旅行で行った事あるんですけどあっちのタコライスもおいしかったし、あっちもこういうお店が多いですよね。沖縄も素敵なリゾートでした。本当は、今年沖縄でクリスマスすごそうと思ってたんですけど、行けなくなっちゃって。でも、こっちで楽しみができたんで、こっちでクリスマス過ごそうかなって思ってます。」
「瞳ちゃんはクリスマス一人なの?」
「予定はまだ立ててないんですよ」
「もしかしたら、翔の店でなんか毎年イベントやってるみたいだから、行ってみたら?私はもう、あの頃の私とは違うから、行かないかもしれないけど。できるなら、もう一度行ってみたいけどプロのダンサーになる夢はもう諦めちゃったし・・・」
「瑠美さん、そんなんでいいんですか?私にばっかり勧めて・・・瑠美さんは堂々としていれば素敵なのに・・・一緒に行きましょうよ・・・」
「そうだよ、クリスマスくらい、瑠美も来いよ。今日のお礼させてくれよ」
お礼?そんなんじゃないのに。
じゃぁ、考えておくわ。
もしかしたら、お店が忙しくてそれどこじゃないかもしれないけれど・・・
私はもう、恋なんかしたくないの。
瞳ちゃんがいるんだから、いいじゃない。
翔の意地悪。。。。
大嫌いよ・・・・
「瑠美・・・・・・・さん・・・・・?」
瑠美さんの目から、涙が溢れ出していた。
−翔からの誘いなんて、何年ぶりだろう。。。。
嘘じゃないのよね???
強がってた自分が、嘘のように、弱くなっていく。
「なぁ・・・お前、強がるのやめろよ・・・いい加減に素直になれよ・・・」
瑠美さんは、トイレに駆け込んで、泣きじゃくっていた。
やめてよ、やめてよ、やめてってば・・・・
私は、翔との別れが本当に近づいていることを知った。
そして、あの人との道を改めて、歩まなきゃならないこと。
一頻り泣いて出てきた瑠美はすっきりした顔で・・・
「瞳ちゃん、翔、今日は来てくれてありがとう。また、瞳ちゃんのお店に遊びに行くね。
けど、翔の店には当分行かない・・・
その日は、特別だからいいけど。。。
ごめん、翔・・・」
「好きにすればいいじゃないか・・・そんなにダンサーになるのを怖がってるのか?週一回2回じゃ、体なまったまんまになっちまうぞ?好きなことできなくて、何が瑠美だ、お前らしくもないし・・・」
「私は好きで、この道を選んだの。もう、私はダンサーやめたの!関係ないじゃない・・・」
「なぁ、もう一度踊って見せてくれよ。瞳も見たいってよ。クリスマスん時だけでいいからよ。」
「もう・・・分からない・・・やめてよ・・・」
段々弱りきってくる瑠美さん・・・
「翔、もういいじゃない、後は瑠美さんが決めることでしょう、そんな意地悪言っちゃ駄目だって・・・」
「ごめんね、瞳ちゃん、ありがとう」
もしかしたら、クリスマスイベントは、瑠美さんがゲストで一人で踊るのかな。
それとも、翔と一緒に踊るのかな。
ペアで見たいな。
そして、食事を終えて、私たちは、家に行った。
今日は、初めて翔が家にやってきた。
少し話したいことがあるらしい
翔は、信頼できるから大丈夫だと思ってる。
内心落ち着かなかったけど。
「瞳、、、瑠美の力になってやってくれてありがとうな。
悪かったな。手間取らせて・・・
あいつも誰かに何かしてやりたかったんだと思う。
きっとそのうち、彼氏連れてくるよ。
落ち着いたら、きっと。」
私は、お茶を入れながら翔の話を聞いていた。
「こちらこそ、瑠美さんに逢えて嬉しかった。」
「よかった・・・あいつも本当は、寂しがり屋だからな、強がってばっかりいるけど」
「なぁ、どんな服買ったのか見せてくれよ」
「いやぁだもん、女同士で選んだんだから、今度店で着てるの見てみたら?」
「考えられねぇ、瞳がこんなリゾートものかよ・・・・」
瞳は小柄ながらスタイルは抜群だったのです。
そして、1時間ちょい話したでしょうか、翔は再び夜の街に繰り出していきました。
家についたという連絡は、、、1時間位してから。
明日から、ちょっとずつ、、、変わっていく私を見てください。
恥ずかしいけれど・・・努力しないと・・・
独立に向けて。