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岩堀 良弘氏:発電マンの太陽光発電塾

第20回 太陽光電力を高値で買い取る 日本版FIT制度を占う

2009年03月11日

日本の新制度(経産省案)との比較検討
買い取り価格、期間、電力の範囲

 今回経産相によって発表された新制度の内容について、日本経済新聞に掲載された記事をもとに、上記のドイツの固定価格買取制度と改めて比較検討してみます。

 まずは記事を見てみましょう。

 「二階俊博経済産業相は24日の閣議後の記者会見で、太陽光発電の普及を促すための新制度を導入すると発表した。家庭や企業が太陽光で発電した電力を、電力会社が約10年の間、当初は従来の2倍程度の1kW時あたり50円弱で買い取る仕組み。今後、具体的な制度設計に向け、関係業界などと調整を進める。電力やガス、石油各社に非化石燃料の導入を義務付ける新法に盛り込み、今国会に提出する方針だ。2010年にも実施する。
 二階経産相は同日朝、経産省内で森詳介電気事業連合会会長(関西電力社長)と会談し、新制度の導入方針を伝えた。森会長は「協力したい」と語ったという。
 新制度は家庭など電力利用者が太陽光でつくった電力について、自宅などで消費する以外の余剰分を電力会社に買い取ってもらう内容。既に発電装置を設置している利用者と制度開始から3〜5年に設置する利用者が対象買い取り価格は太陽光発電の普及に合わせて、年度ごとに下がる。」
(日本経済新聞 2009年2月24日夕刊より抜粋)


(1)買い取り価格
 買い取り価格は1kW時あたり従来の2倍の約50円を想定しています。
 日本の現状は、買電と売電がほぼ同じ価格ですから、2倍の買い取り価格というのは大きな進歩といえます。私が言うところの「発電貯金」に振り込まれる金額が単純に倍になるということですから、設置者のメリットはかなり増えます。つまり今まで毎月5000円の振込みがあったとしたら、それが1万円になる訳ですから、これは大きいです。ただ、ドイツの3〜4倍に比べればまだまだ弱いのは否めません。

(2)買い取り期間
 買い取り期間は10年間としています。ドイツの20年に比べて半分です。現状、何の保証もなくボランティアで買い取ってもらっていることを思えば、10年間確実に買い取り保証がされるのは、設置者からすればずいぶんリスクが軽減されます。ただ、今回の措置では「10年で元が取れるか?」と考えると甚だ疑問です。今年度の補助金を使ったとしても設置費の1割程度しか負担してもらえませんし(自治体の補助金額により地域差があります)、設置の条件が相当良いところでないと10年で元を取るのは厳しいのではないでしょうか。また2倍買い取りの範囲が「余剰電力」に限っているため、自家消費分の比率によって償却期間にそれぞれの家でかなりの差が出ることになります((3)で詳しく解説します)。
 しかも、10年の期間以後はどうなるのかということについては、経産省案では何も言及していません。ある設置者からは「10年経ったら買い取りを拒否されるのではないか?」という不安がすでに寄せられています。10年の期間以後についても何らかの保証を示してあげないと、政府の望むような急速な普及にはつながりにくいと思われます。

(3)買い取り電力の範囲
 ドイツの全量買い取りに対し、経産省案では“余剰電力のみ”を買い取る案となっています。1日の発電量のイメージ図を見ながら説明しましょう。

太陽光発電の1日の発電量のイメージ

 今回の案はあくまで余剰電力のみを2倍で買い取るという形になっています。つまり図の(B)緑の部分のみです。(A)黄色の部分は売ることはできず、自家消費に回すしかない訳です。この場合、余剰電力が多い人にはメリットが大きいですが、自家消費が大きく余剰電力が少ない場合は、ほとんど恩恵を受けられないということになります。

 首都圏など土地が狭く屋根面積も比較的小さい地域では、1.5kW〜2kW前後の小出力の設備も少なくありません。それらは出力が小さいため余剰電力も少なくなります。しかも出力が小さいと設置コストも割高です。つまり「小さな家ほど損」という訳ですが、余剰電力のみの買い取りだと、その不公平感がさらに強まることになります。

 小出力の設備の場合、「1kWあたりの設置価格が70万円以下」という現在の補助金の条件からも外れる可能性が高く、助成金難民といった状況にさえなりかねません。

太陽光発電
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