岩堀 良弘氏:発電マンの太陽光発電塾
第20回 太陽光電力を高値で買い取る 日本版FIT制度を占う
固定価格買取制度(FIT)とは?
――ドイツの場合
フィード・イン・タリフ(Feed-in tariff:略してFIT)といわれるこの制度は、日本では「固定価格買取制度」と呼ばれています。
将来的に有望ではあるけれど市場においてはコスト高で脆弱な再生可能エネルギーを普及させるための助成制度の一つで、設備で発電された電力を通常よりも高い価格で電力会社が買い取り、しかも10年〜20年といった長期に渡って買い取ることを保証する制度です。助成制度には、設置に対する補助金、RPS法、余剰電力買い取り、などいくつかありますが、そのなかでも導入の効果が非常に高い制度とされています。
一言で「固定価格買取制度」といっても、この制度は設計の自由度が高く、買い取り価格や期間など、その運用の仕方は国によって様々です。すでに多くの国がこの制度を導入して実績も出ているので非常に確実性の高い方法だといえます。
固定価格買取制度の枠組みを決定付けるいくつかの要因について、ドイツのケースを見てみましょう。
(1)買い取り価格
再生可能エネルギーで発電された電力を通常の電力単価を上回る価格で電力会社(ドイツの場合は送電会社)が買い取ることを法律で義務付けています。エネルギーの種類によって異なる買い取り価格(これを「タリフ」といいます)が決められています。太陽光発電の場合は通常電力価格の3倍〜4倍程度で買い取ることが保障されています。
(2)買い取り期間
最初に決められた買い取り価格(タリフ)で、その後20年間買い取ることを保証しています。最初に決めた価格が20年間も続くので、設置事業者は収益の見込みが立ち、投資家は安心して投資ができます。つまり、資金を非常に集めやすくなるのです。
(3)買い取り電力の範囲
ドイツの場合は発電事業者と送電事業者が独立していて、送電事業者は発電された電力の全量を買い取ることを法律で義務付けられています。
(4)買い取り価格(タリフ)の推移
制度が導入された初期は買い取り価格(タリフ)は高めに設定されます。まだ設備費が高額な初期段階で導入した人ほど、高い買い取り価格(タリフ)を得られるようにするためです。普及が進んで量産効果により設備費用が安くなれば、それに応じて買い取り価格(タリフ)が低くなるように設計されます。(図1参照)
また、次年度以降いくらで買い取られることになるかを予告しておきます。来年の導入では買い取り価格(タリフ)減ると分かれば、「できるだけ今年中に導入しよう」という動機付けになります。
(5)対象となる事業者
水力、太陽光、風力、地熱、バイオマスなどの再生可能エネルギー事業者が対象となります。個人・企業は問いません。
(6)費用の負担は誰が?
ドイツでは買い取り価格が上がった分は、全国民が広く負担することになっています。ドイツの場合、各家庭で1カ月約3ユーロ(円換算約370円:2009年3月時点)程度電気代が上昇しました。
この制度のいいところは、再生可能エネルギーの設備を導入しようとする者(個人または企業)にとって、発電した電力の買い取り単価と買い取り期間が保証されるため、元を取るまでの期間がほぼ確定され、それゆえ安心して投資ができるということです。またドイツの場合、買い取り保証期間が20年と長期に渡るので、最初の10年以内でほぼ設備費が回収でき(もちろん設置条件で違いますが)、残りの10年で利益が確保できます。投資リスクが読めるので、多くの資金が流れ込み、その資金が産業を発展させ、さらに雇用を生み出すという好循環を作り出しました。
この制度は国から見た場合、タリフを管理・調整することによって普及をコントロールしやすく、導入目標を達成しやすいという特徴があります。また、投資に対する費用対効果が最も高く、無駄が少ないことが確認されています。
デメリットとしては、費用負担を電力料金に上乗せするため、発電設備を設置していない人への負担が大きいということです。
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