与野党が激しくぶつかり合ってきた衆参両院の「ねじれ国会」が一転して、凪(なぎ)の状態になっている。小沢一郎民主党代表の資金管理団体「陸山会」の政治資金規正法違反事件が、自民、民主両党を震撼(しんかん)させ、互いに追及を手控えているためだ。このため、本来なら激突するはずの予算案や法案の審議日程がスイスイと決まっている。一時は絶望視されていた東京五輪招致を目指す国会決議も実現する見通しだ。どこまで奇妙な凪が続くのか−。(水内茂幸、大谷次郎)
[時系列で追う]小沢一郎民主党代表の発言
「これが当たり前なのだ!」
自民党の大島理森国対委員長は13日、重要法案の審議が順調に進む状況を記者団に問われ、得意げに胸を張った。
大島氏は同じ日の党総務会でも「これからは重要法案の審議が続く。3月いっぱいは平成21年度予算案と関連法案の早期成立を軸に進めたい」と今後の見通しを説明した。
衆院では3月に入り、雇用保険法改正案、道路特定財源一般財源化法案の審議が始まっている。今後もアフリカ・ソマリア沖の海賊に対処する海賊対処法案、基礎年金国庫負担率を2分の1に引き上げる国民年金法改正案などの重要法案が審議入りの予定だ。
参院では21年度予算案の審議が大詰めを迎え、参院予算委は17日に採決の前提となる公聴会を開く。集中審議などを経て、26日にも参院本会議で採決。野党の反対多数で否決されるものの、衆院の判断が優越する憲法の規定で予算は年度内成立の見通しだ。
また、予算関連の税制改正関連法案も民主党は年度内に参院で採決する意向を与党側に伝えており、「昨年は税制改正法案のガソリン税をめぐる与野党攻防が過熱したことを考えたら不思議なくらい順調だ」(与党幹部)という。
重要法案の大半はこれまで、与野党対決の案件として、民主党が国会審議自体に難色を示していた。それが「審議に抵抗してきた民主党だが、同党の小沢一郎代表の公設秘書が逮捕された3日以降、国会戦術が急速に軟化した」(自民党国対幹部)のだ。
民主党は西松事件の動揺が広がり、国会で与党と対峙するどころではないのが実態のようだ。
一方で、自民党も反転攻勢に出られないでいる。
西松建設絡みでは、二階俊博経済産業相の疑惑が取り沙汰されるほか、複数の自民党議員が西松建設サイドから資金提供を受けていたからだ。東京地検特捜部による捜査に関し「自民党に波及しない」などと語った漆間巌官房副長官の発言もあって、民主党追及の機運はしぼんだままだ。
これらの事情が国会運営をかえって円滑にしているという皮肉な状況が生まれている。与党には、「通常国会の会期を延長しなくても、新たな追加経済対策のための21年度補正予算案を成立させることだってできるのではないか」との楽観論さえ出始めた。
ただ、民主党は「政治と宗教」など新たな追及カードを切るかどうか検討に入っている。西松建設の違法献金事件がどう展開するかも不透明で、国会が再び荒れ模様に転じる可能性もある。
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