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16連射、ゲームは1日1時間の裏側――高橋利幸氏、ファミコンブームを振り返る(後編) (2/5)
[堀内彰宏,Business Media 誠]
実は17連射だった
「16連射」というものが流行りましたが、実は1985年のキャラバンの時には16連射という言葉はありませんでした。1985年の9月か10月に「スターフォースのボーナスキャラをやっつけるのが名人は早いけど、どれくらいのスピードで弾を撃っているの?」という投書がコロコロさんの方にありまして、「調べてみようよ」ということになりました。ボーナスキャラはラリオスという名前なのですが、コアが白く光ってから合体するまでの1秒間に8発打つとボーナス得点が5万点入ります。しかし、光る前に撃ってしまうと、その分をプラスして撃たなければいけない。(光る前に)5発撃ってしまったら、13発撃たないといけないわけです。それを利用して連射速度を計ると、だいたい15〜16発だったのです。コンピューター的に16は切りのいい数字なので、「16(連射)でいっちゃえ」と言ったのです。
実際に測定したのは、映画「GAME KING 高橋名人VS毛利名人 激突! 大決戦」の時です。私と毛利名人が戦っているシーンがありまして、映画は1秒間に24コマのフィルムからできているのですが、映画のADさんが一番連射が早い時の240コマを切り取って数えてくれたのです。数えてみると「(10秒間に)174発撃ってた」ということで実は17連射だったのですが、「いまさら17(連射)というのもなあ」と思って16(連射)のままにしています。
最高記録ばかり言っていると、「(16連射を)やってくれ」と言われた時に困ります。100メートル走9秒98の記録を持っているカール・ルイスを体育館の運動場に呼んで、「さあ走ってもらいましょう」となったら、観客は9秒98を期待しますよね。でも、9秒98を出すためには2〜3カ月かけて調整しないとできません。だから、この1発の差があったことで、とても楽になりました。「16(連射)でいいんだぞ」と。今は全然できませんけどね。この間測ったら、最高(10秒間で)132でした、もう50歳ですから。当時が26〜27歳ですので、「やっぱり20代の肉体には勝てないな」という感じです。(連射方法として)私が“コスリ※”をやろうとすると、熱狂的なファンの方やうちの会社の数名は怒るんですね。「名人の“コスリ”なんか見たくない。“ピアノ撃ち※※”、邪道です。“叩き”です、“叩き”以外はダメ」と言われると、もう16連射はできません。
ちなみに1985〜86年にトランジスタとICを使って、ヒマな時にハンダ付けで(ファミコンのコントローラーの)連射スイッチを作ったことがあります。するとそれを見た社長に持っていかれまして、また作ると今度は副社長が持っていき、次は専務が持っていきました。連射スイッチは会社で使うのではなく、家に持って帰って遊んでるんですね。そこで「これ売れるよね」ということで発売したのが、「ジョイカードマーク2」という連射機能付きコントローラーで、220万個以上は売れましたね。やっぱりみんな連射するのが嫌だったんでしょうね。この間、Wiiウェアで『スターソルジャーR』を出したのですが、テストプレイをデバッガー※がやるときに「連射スイッチを付けろ」とクレームが来ました。あの当時は肉体を鍛えることはすごいことなんだということで、連射速度を競っていたのですが、もう時代が違うのでしょう。
連射速度を測る機能も作りました。『迷宮組曲』を作った時に、メモリがちょっと余っていたらしく、「高橋さん、何か付けたいものある?」と聞かれたので、「今流行ってるんだから、連射測定器の機能を付けたら?」と言ったら実装されました。『迷宮組曲』で計れる連射速度は過去10秒間の平均値です。そのため連射をやめると、どんどん下がっていきます。ただ、それだと連射速度を測るためにテレビとファミコンを持って歩かないといけないので、持って歩ける何かが欲しいねということで作ったのが「シューティングウォッチ(シュウォッチ)」という黄色い時計です。
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