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特集/「医師不足解消につながるか?産科医療補償制度」 |
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全国的に進む深刻な産科医不足。その原因は、過酷な勤務に加えて、訴訟リスクの高さだと言われています。その対策として、ことしから「産科医療補償制度」という制度がスタートしました。
新しい制度はお産の現場の立て直しにつながるのでしょうか? |
東京都内に住む、鹿野詩乃ちゃん(6)。出産の際の医療事故で、重い脳性まひの障害が残りました。
「ミルク飲む?ミルク飲む人?」(母・乃里子さん)
頻繁に吸引が必要で、自力で食事を取ることもできません。入退院を繰り返す日々の中で、少しずつ成長してきました。
「くじけそうになる時もあったんですけど、こんなに小さい娘が一生懸命頑張っているのに、落ち込んでばかりもいられないなと思って」(母・乃里子さん)
詩乃ちゃんのような子どもを手助けするため、ことしから始まった新しい制度があります。 |
「1月1日以降、ことしから始まったんです。赤ちゃんが脳性まひになったら補償金がおりますよという制度なんで。この制度ご存知でした?」(助産師)
「全然知らないです」(妊婦さん)
産科医療補償制度。こどもが重い脳性まひと診断された場合、3000万円の補償金が支払われる制度です。1人3万円の掛け金は病院を通じて集められます。これにともなって、妊婦個人の負担が増えないよう、出産育児一時金が増額されています。
「生まれたときは多分頭が真っ白になって、どうしたらいいか分からないと思うので、補償していただけるのであればそれが一番ありがたいと思います」(妊婦さん)
「以前、医療事務をしてたので、産科がいま大変だということはすごくわかっていたので、こういう制度ができたことは産むほうもいいと思うし、先生方もいいんじゃないかなと」(妊婦さん)
制度を運営するのは、厚生労働省の外郭団体である「日本医療機能評価機構」。大学の医師でもある後技監は、いち早く制度を設立するため、準備に追われてきました。
「こういう制度をとにかく始めて、そして見直しながらもいいものとして定着させて、医療に対する信頼が再び大きなものになっていくように」(日本医療機能評価機構・後信技監) |
なぜ産科だけを対象に、制度の設立を急いだのか――?
「お医者さんたちが仕事に専念できるように、極端に言ったら訴訟リスクをゼロにする。特に産科のお医者さん、訴訟という事を考えるのが嫌だから辞めるのはやめてください」(舛添要一厚労相・去年1月)
産婦人科は、他の科に比べて訴訟を起こされる割合が高く、産科医の不足につながっているとされています。この制度の特徴は、医師に過失がなくても、補償が行なわれる点。そうすることで、患者側は早い段階で補償を受けられ、医師の訴訟リスクも減るというのです。
「過失の有無というのがですね、法律上の判断がとても難しい領域だけれども、どうしても一定の割合で起きてしまう、避けられないというようなことがあって、医療者も患者さん側も紛争で時間も気持ちもすり減らして疲れていくような領域には適用するのがいい制度じゃないか」(日本医療機能評価機構・後信技監)
しかし、脳性まひの子ども全員が救済されるわけではありません。未熟児や先天性の障害は対象から外れているのです。対象となる子どもは年間500〜800人と試算されていて、必要に応じて対象範囲の見直しも行なうとしています。
「今回の産科医療補償制度というのは、非常に限定的で狭いし、対象も限られているという点で、たくさんの限界はあると思います。限界はあるかもしれないんですが、そういう制度は今までどこにもなかった。この国の中ではどこにもなかったものを新しく、何とか上手く作って、それを育てていけないか」(制度設計に携わった北里大・海野信也教授) |
この制度で、本当に医療裁判は減るのでしょうか?
出産の日に何が起きたのか知りたいと思った鹿野さん夫婦は、子育てに追われるなか、裁判の道を選ぶしかありませんでした。
「結果が悪かったから病院にどうこうと言ってるんじゃなくて、何が起きてこういう事になったのかちゃんと知りたかったというのが一番」(鹿野乃里子さん)
病院側は監視義務を怠ったことを認め、和解が成立しました。しかし、使われた薬などについては争点とならず、真相は分からないままです。
医療裁判の限界に直面した鹿野さんの元を、ある女性が訪れました。新葛飾病院の職員・豊田郁子さん。6年前に医療事故で長男を亡くした豊田さんは、自ら患者と医師の架け橋になろうと、病院の患者支援室で働いています。
「看護師さんは来るんですけど、薬を置きにくるだけで、お腹をさすって様子を診たりとか内診や検査とかもなかった」(鹿野さん)
「様子を見にきたけど…」(豊田さん)
「お薬置いていくだけ、次の薬ですみたいな感じで」「5個目を投与しようと思って看護師が来たときに私の異常に気付いて」(鹿野さん) |
医療裁判の限界を乗り越えたい――
その思いから豊田さんは、産科医療補償制度の委員を引き受けました。担当するのは「原因の分析」。補償対象となるケースについて、医療事故の原因を分析し、再発防止に向けてフィードバックしようという仕組みです。第三者の医師や看護師、弁護士などで構成された委員会に、豊田さんは患者を代表する立場として選ばれたのです。
「患者さんが知りたいところにちゃんと言及されているかとかですね、わかりやすいものであるかとかですね。普段の病院での経験も生かしたご意見をいただければと思っております」(日本医療機能評価機構・後信技監)
「お子さんを育てながら裁判を起こすというのは、私には想像できないくらいすごい心労だと思います。患者の意見を取り入れられるような体制であれば、いつの日か患者さんにとって良い仕組みではないかと評価できる日が来るんじゃないかなと思いますけど」(豊田郁子さん)
大きな課題を背負ってスタートした、産科医療補償制度。産科医療の危機に歯止めをかけられるのか――
日本初の試みが実を結ぶかどうかは、これからの運営にかかっています。 |
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| 2009年3月12日放送 |
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