「元気で帰ってきます」。重い心臓病を患い、ドイツでの移植手術に望みを託して15日に故郷を出発した宮原敬助さん(18)=熊本市=を見送ろうと、入院していた熊本赤十字病院(同市長嶺南)には多くの支援者や親族が駆けつけた。
病室を出た敬助さんは救急車が横付けされた出入り口に車いすで現れた。白いマスクに時折、笑顔を浮かべる。「頑張ってね」と声を掛ける支援者に頭を下げ、看護師から花束を受け取った後、空港に向かう救急車には車いすを自ら降りて乗り込んだ。
ドイツには主治医や看護師、家族ら7人が同行する。「入院中には(気持ちの)浮き沈みもあったが、今は迷いがない。自分の人生を切り開き、生き抜くという決意を感じた」と小柳俊哉・心臓血管外科部長。1週間ほど前から落ち着き、受け答えもしっかりしていたという。
敬助さんは2003年6月に拡張型心筋症を発症。昨年11月に両親の知人たちが「敬助君を救う会」を結成し、募金活動を開始。九州各地から約1億3000万円の善意が寄せられた。
出発を前に敬助さんの父、広一さんは「敬助はたまたま病院の先生の紹介でドイツに行けたが、国内には移植手術を待っている人が大勢いる。海外での臓器移植は難しく、日本の臓器移植法改正が必要」と語った。
=2009/03/16付 西日本新聞朝刊=