12日、明らかになった国立病院機構熊本医療センター(熊本市)で女性患者が輸血ミス後に、死亡した医療事故は、女性患者の血液型を検査する際、誤って別の男性患者の血液が女性患者の名前を記した採血試験管に入れられ、検査課に回ったためとされる。県庁で記者会見した池井聰(さとし)院長らは「基本的な事項の確認ができていなかった」と謝罪したが、どの段階でミスが起きたのか経緯は不明だ。
同センターによると、女性患者が搬送されたのは、9日午前11時半ごろ。当時、救急外来には、ほかに患者7人が搬送され、医師3人、看護師8人が治療に当たっていたというが、河野文夫副院長は「手が足りない状況ではなかった」と述べた。
センターの「事故防止マニュアル」には血液を採血する際、容器(採血試験管)に患者名のラベルを張った後、患者とラベルの名前が合っているか「採血直前に患者をフルネームで呼び確認する」と定めている。
しかし「忙しいときは守られていなかった」(河野副院長)というのが実態のようだ。
今回の原因は(1)男性患者の血液が誤って女性患者の試験管に入れられた(2)男性患者の血液が入った試験管に誤って女性患者のラベルが張られた‐の2つのケースが考えられるが、いずれもマニュアル通りに対処していれば、防ぐことができたはずだ。
同センターでは、患者の転倒や薬の取り違えなど医療事故直前の事例(ヒヤリハット)が年間400‐500件報告されている。
池井院長は「今後は診療体制を見直し、安全な医療の実現を心掛けたい」と語った。
=2009/03/14付 西日本新聞朝刊=