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コラム社説2009年03月16日(月)付 愛媛新聞

公立病院改革 住民が展望のもてるプランを

 わが町の病院がどうなるのか、思いめぐらせた県民も少なくないのではないか。
 県立と市町立を合わせて県内十六の公立病院のうち、県と宇和島市、西条市の計五病院が直営から地方独立行政法人などへの経営形態転換を計画・検討している。そんな実態が本紙の調べでわかった。将来の見直しなどを考えるところも四病院にのぼる。
 公立病院改革の旗をふる総務省は独法化のほか指定管理者や民間譲渡を推奨し、今月末までに改革プランを策定するよう要請している。赤字額を自治体の財政破綻(たん)を認定する指標の一つにするなど、厳しいムチも用意した。
 それに沿う見直し案からは、財政難に苦しむ自治体にとって公立病院が重荷になっている姿が浮かびあがり、あらためて危機感を抱く。
 総務省によれば、二〇〇六年度決算で全国の公立病院の実に四分の三が赤字を計上した。県内では〇七年度、十六病院中十病院が赤字だ。
 このままでは、公立といえども立ちいかなくなるおそれがあるのは確かだろう。
 ただ、市立総合病院の休止が市長のリコール投票に発展した千葉県銚子市の例を持ち出すまでもなく、地方ほど公立病院の存在は大きく、住民には命綱だ。救急やへき地医療など、採算が厳しく民間ではやっていけない部門を担う意義もそこにある。公立病院改革には多面的な検討があってしかるべきだ。
 そもそも経営悪化の背景には構造的問題がある。
 診療報酬のマイナス改定や自己負担引き上げ、在院日数短縮などだ。医師不足も要因で、残った勤務医をいっそう疲弊させ、現場を去らせる悪循環にある。
 経営形態見直しだけでは、地域医療が守られるのかという住民の不安は消えない。
 たとえば、独法になれば自治体の関与を保ちつつ、人事や財政の面で自律的な運営ができるようになる。無駄をはぶき、効率性を追求することはまちがっていない。
 が、コスト削減を前面に出して一律にそれを強いるようなら、目先はよくとも現場をさらに疲弊させないか。
 そうではなく、重要なのは医師確保に努め、医療ニーズにこたえることだ。
 研修医の大都市集中や大学病院の派遣医師引き揚げを招いた臨床研修制度の見直し、医学部定員の増加など、路線の修正は始まっている。一方で、勤務医の処遇が相対的に低い診療報酬体系の是正はまだ不十分だ。医療費抑制の検証も急務で、多面的な検討には医療行政を担う厚生労働省との連携が欠かせない。
 どの地域の住民にも等しく医療サービスを受ける権利がある。展望のもてるプランづくりを求めたい。

   
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