“金賢姫という曲者”十数年ぶりに姿見せた金欠事情

●目新しい事実は何も出ず

「いい商売になる」と、テレビ局は大ハシャギだ。大韓航空機爆破事件の金賢姫（４７）が十数年ぶりにメディアの前に姿を現した。

　日本から殺到した３００人の報道陣を前に、「田口八重子さんはきっと生きている」「横田めぐみさんが死んだとは信じられない」と、サービス満点。田口さんの家族には「韓国のお母さんになります」なんてリップサービスまでしていた。

　だが、韓国では、整形までして隠れるように生きていることはあまり知られていない。

「韓国での金賢姫の扱いは、乗員・乗客１１５人を殺したテロリストです。大韓航空機事件の遺族たちは真相解明のために、ずっと彼女との面会を求めているが、逃げ回っています。そんな金賢姫が、日本人相手だとノコノコ出てきたから、韓国メディアは冷ややかなのです。批判を承知のうえで金賢姫が久しぶりに姿を見せたのは、政治的、経済的理由からでしょう。経済危機の韓国は、いま日本に外貨支援を要請している。日本政府から、田口さん家族との面会を持ちかけられた李明博政権としては、国内感情よりも日本を優先せざるを得ないわけです。さらに金賢姫の個人事情もあります。国家安全企画部の元職員と結婚した金賢姫は、商売に失敗し、２人の子供を抱えて、生活が困窮しているといわれます。“日本人と会ってくれ”と韓国政府に頼まれると、断れる立場にはないのです」（評論家・河信基氏）

　２２年前の大韓航空機事件以来、金賢姫は韓国当局に徹底的に取り調べられている。だが、日本人の拉致問題解決に役立つ情報は出てこなかった。

　そんなことを百も承知のうえで、政権浮揚策にまた拉致問題を利用する麻生政権。その裏で奔走したのは、「検察捜査は自民党に及ばない」と発言した漆間官房副長官だ。

「北朝鮮問題のエキスパート」として、安倍元首相に重用され、麻生内閣に引き継がれたが、結局はこの程度のセレモニーを演出することが精いっぱいだったわけだ。横田めぐみさんの父親が「新しい話はなかった」と肩を落としていたのがすべてである。

　これで麻生政権の支持率がアップすると考えたら、めでたすぎるというものだが、金賢姫の金欠につけ込んで、単独手記やテレビ出演を依頼する日本のメディアが現れないか心配だ。

（日刊ゲンダイ2009年3月12日掲載）