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【社説】

G20 結束の真価が問われる

2009年3月16日

 英国で開かれた二十カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が財政出動と金融緩和による景気刺激に合意した。ただ、各国間にはすき間風も漂う。結束の真価が問われるのはこれからだ。

 昨年十一月に最初のG20緊急首脳会合(金融サミット)が開かれてから四カ月。わずかな間に世界経済の危機は一段と深まった。

 金融不安は収まるどころか拡大し、米国では事実上、政府の厳しい管理下に置かれた銀行もある。日本でも生産水準が急落して、雇用が悪化した。

 こうした中、中国やインドなど新興国が加わったG20は世界の国内総生産(GDP)の85%を占め、主要国中心のG7に代わって主役に躍り出た。恐慌への転落を食い止めるのはG20の協調行動しかないといっていい。

 共同声明は「世界経済の成長回復に各国が必要なあらゆる行動をとる」と強調し、財政拡大の重要性を指摘した。しかし、ひと皮むくと、舞台裏では温度差も明らかになっている。

 国際通貨基金(IMF)や米国が提案した各国のGDP比で2%の財政支出という数値目標は欧州の反対で見送られた。米国や中国はすでに目標を達成しているが、ドイツ、フランス、イタリアなど欧州各国は届かず、欧州が一段の重荷を背負わされかねないと懸念したためだ。

 各国事情はあるにしても、民間部門が総崩れ状態の中で、政府部門が支えなければ、世界経済は底が割れてしまう。しばらくは緊急時の非常手段として財政出動による協調が最重要課題になる。

 日本は与謝野馨財務・経済財政・金融相が数値目標に同意し、今後少なくとも真水の支出で三兆円を上回る規模の追加景気対策を定めることを国際公約した形になった。雇用の安全網強化や医療・介護、省エネ促進、環境対策など中長期的な成長にもつながる政策の具体化を急ぐべきだ。

 会議はIMFの資金基盤増強と新規融資枠の拡大、アジア開発銀行の増資でも合意した。中国やインドなど新興国が出資増額を受け入れるなら、当然の見返りとして世界経済運営でも発言力が増すだろう。中国は財政でも率先して大幅拡大に動いた。

 従来のG7が急速に威光を失い始める中、参加国が増えたG20は駆け引きも複雑になる。日本は新しい世界の成長戦略をどう描いていくのか。内向きの議論ばかりにとらわれていてはいけない。

 

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