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NIKKEI NET

社説1 危機克服と再発防止へG20協調深めよ(3/16)

 英国で開いた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は、世界経済の成長回復まで「あらゆる必要な行動をとる用意がある」とする共同声明を採択した。4月2日にロンドンで開く第2回緊急首脳会合(金融サミット)を前に、財政出動の規模などで意見の対立も表面化したが、金融監督の改革などで一定の前進もあった。

 G20が問われているのは、当面の危機を克服し中長期で危機再発を防ぐという2段構えの着実な国際協調だ。主要国と新興国が結束してそれぞれの責務を果たすとともに、財務相会議で浮上した論点を金融サミットの明確な合意につなげてほしい。

 初回の金融サミットが開かれた昨年11月に比べて、危機はいっこうに改善していない。2009年の世界経済はマイナス成長が濃厚だ。米欧の金融機関が抱える経営不安で株価は低迷し、カネ詰まりが世界の貿易や生産活動を停滞させている。

 共同声明が金融システムの安定を優先事項に掲げたのは当然だ。震源地の米国で金融不安が続く限り、経済対策の効き目もあがらない。追加の資本注入や不良資産の買い取りを強力で迅速に進める必要がある。ガイトナー財務長官は新たな不良債権処理の枠組みを比較的早い時期に公表すると表明した。欧州も金融安定化の取り組みを強めるべきだ。

 もう1つの優先課題は、G20各国が需要の減少を補う強力な経済対策を極力早く具体化することだ。

 共同声明は財政出動が「成長と雇用に死活的に重要」だと指摘した。しかし、米国が国際通貨基金(IMF)の指摘に沿って呼び掛けた「国内総生産(GDP)の2%規模」の合意は見送られた。欧州に財政規律を重視する意見が根強いためだ。首脳会合ではさらに足並みをそろえ、固い結束を示すよう望みたい。

 日本も需要創出の効果が確実にあがるような質の高い追加経済対策を具体化して、世界に対する責務を果たす必要がある。

 中期的な危機の再発防止策では、ヘッジファンドや格付け会社を登録制にして透明性を高めることや、IMFの資金基盤を緊急に拡大する点で一致した。主要国の金融当局で構成する金融安定化フォーラムもG20体制に広げる。金融監督の手法などで各国の違いはあるが、一歩一歩、協調を深めるのが大切になる。

 共同声明は「あらゆる形の保護主義に対抗する」と強調した。自国優先の保護主義が広がれば、世界の貿易や経済は縮小均衡に陥る。首脳会合でのより明確な合意が不可欠だ。

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