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社説2 やっと緒につく公文書管理(3/16)

 政府が国会に公文書管理法案を提出した。今国会で成立させ、2011年に新しいルールで公文書管理を始めることを目指している。

 官庁任せの現在の仕組みを是正する一歩という意味では評価できる。しかし、改革のゴールはまだ先だということも忘れてはならない。

 公文書管理法案は行政機関の文書作成、保存、国立公文書館への移管、公開についてのルールを統一的に定めたものである。

 ポイントの1つは、文書を作った段階で統一基準の名前を付け、将来保存すべきか廃棄すべきかを決めることだ。また、各官庁は文書が適正に管理されているかどうか調査し、毎年首相に報告する義務を負う。首相の側から、報告を求めたり調査に入ったりすることも可能になる。

 さらに、内閣府に第三者機関の公文書管理委員会をつくり、官庁の文書管理に問題があれば改善を勧告できる制度も盛り込まれた。

 公文書管理はこれまで、「ルールなし、意識なし、チェックなし」の状態だった。各官庁がそれぞれの基準で文書を作る。国立公文書館に移管するかどうかも官庁次第で、そこに文書を隠したり、勝手に廃棄したりといった問題の土壌があった。法律ができて意識改革が進めば、こうした失態はある程度防げるだろう。

 ただ、公文書管理のために不可欠な国立公文書館の機能強化には大きな課題が残っている。

 公文書管理のあり方を検討した有識者会議は昨秋、現在職員40人あまりの独立行政法人である国立公文書館を、数百人規模の「特別の法人」に変えるよう提言した。文書管理のプロ集団になり、行政府だけでなく立法、司法の文書も受け入れることを念頭に置いてのことである。

 しかし、法案では改組は見送られた。職員もこの4月から非常勤で11人採用するだけである。今の公文書館ではスペースも足りなくなるし、どうすれば必要な人材を育成できるかについての議論も乏しい。

 公文書は国の歴史を記録した国民の財産である。組織をいたずらに大きくするのは好ましくないが、公文書をきちんと管理・保存・公開する仕組みづくりは、民主主義のインフラを整備することなのである。

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