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社説:G20準備会合 「何でもやる」の誓いは重い

 「世界経済が回復するまで必要なことは何でもやる」--。週末に英国で開かれたG20会合の声明だ。世界経済の約85%を占める主要20カ国・地域(G20)の財務相と中央銀行総裁によるこの誓いは極めて重い。来月ロンドンで開く首脳会議(サミット)に向け、各国は言葉の重みを行動で裏付けなければならない。

 今度のサミットは、昨年11月にワシントンで開いた前回と異なり、具体的成果が求められる。リーマン・ショック後の混乱の中で緊急招集された前回は、G20の首脳が一堂に会すること自体に意義があった。2回目で準備会合も持った今回は違う。市場参加者を含む世界全体が注目する中、難題の解決から目をそらすような形だけの合意にとどまれば、G20体制は半年足らずで信頼を失うことになるだろう。

 サミットの準備会合となった週末の会議を前に、米欧間の亀裂が表面化したことは不安を残した。過去最大の景気刺激策をまとめた米国は、国内総生産(GDP)比で2%規模の景気対策を他国に求め、独仏など欧州が反発した。一方、「問題の発端は米国発金融危機」との意識が根強い欧州勢は、再発防止を目指した金融の規制強化を最重要議題にすべきだと主張した。

 しかし、今最も急がねばならないのは「GDP比2%の景気刺激策」でも「再発防止策」でもない。景気回復の足かせとなり、株価下落の要因にもなっている金融不安を解決しない限り、財政出動も切りがないのである。巨大金融機関の将来が見えない状態をこれ以上続けてはならない。

 週末の会合にも参加したゼーリック世界銀行総裁は、「金融機関の経営健全化を置き去りにした財政出動では一時的な興奮剤にしかならず、不良資産の解消と銀行の資本増強なしに、好転は望めない」と警告した。全くその通りである。

 G20財務相・中央銀行総裁会議が共同声明で金融の正常化を「優先事項」と位置づけ、不良資産の処理に関する原則を付属文書にまとめたことは救いだ。この優先事項で、一番大きな宿題を抱えているのは米国である。オバマ政権は、一刻も早く不良資産の抜本処理につながる具体的で有効な方策を仕上げなければならない。一方、公的資金の追加投入に難色を示している米議会も「必要なことは何でもする」と誓ったG20声明の重みを当事者として受け止めるべきである。

 日本の役目も大きい。与謝野馨財務・金融・経済財政担当相は、米政府の声に応え財政出動の「GDP比2%超」を目指す意向を示した。だが問題は規模ではなく、将来への希望につながる経済活性化の構想だ。そして、金融の正常化で米国に抜本策を強く働きかけることも日本がなすべき「何でも」に当然含まれるはずである。

毎日新聞 2009年3月16日 東京朝刊

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