フォステクスのブース。Gシリーズの製品がずらりと勢揃いした。注目はいちばん内側にセットされた小型2ウェイ機「GX100」 |
最盛期に比べると数は減ったものの、やはりオーディオメーカーの出展作は気になる。とくに目についたものをご報告する。
まず、フォステクス。フォステクスといえば、中高年のファンにとっては、自作スピーカーのユニットメーカーとしての印象が強い。しかし、近年は完成されたスピーカーシステムのメーカーとしても評価が高い。その代表作が「G2000」。これはトールボーイの美しいキャビネットに、オリジナルユニットを搭載した4ウェイのフロア型で、価格は税込1,260,000円(ペア)。 純マグネシウム振動板による、25ミリ口径のトゥイーターと100ミリ口径のスコーカーの組み合わせによる、透明度の高い中高音域と、ダブルウーファーによる応答性が高く重量感のある低音が融合した優れた再現力で高い評価を得ている。「G2000」をトップに、3ウェイのフロア型「G1302」(税込483,000円/ペア)、2ウェイブックシェルフ「G1300」(税込315,000円/ペア)がラインナップされた、このGシリーズ製品については、本欄でも、2008年5月15日と9月29日の2回に渡ってご紹介した。
新登場の「GX100」。3つのカラーバリエーションがある |
親子工作教室に人気が集まるのを見ても、スピーカーへの関心度は高いが、メーカー製品には自作製品とは次元の違う再現力が求められるのは当然のこととして、今はサイズや重量、価格の面でも、より身近に感じられる製品の需要が高い。その点でフォステクスが、上位機のノウハウを生かして、専門メーカーならではの高性能機をペア10万円を切る価格で作り上げたことは高く評価される。
大型システム「TAD-R1」を展示するTADのブース。注目は内側にセットされた参考出品の小型2ウェイ機。アンプは試作機で、これも近々発売される予定 |
このような、上位機の血筋を受け継いだ低価格モデルの開発は、パイオニア直系の「TAD( テクニカル オーディオ デバイセズ ラボラトリーズ)」でも目指されていて、ブースでのデモ再生はもっぱら大型リファレンスモデル「TAD-R1(TAD Reference One)」で行なわれたが、その脇にさり気なく小型2ウェイ機が並べられ、ほぼ完成品に近い形に仕上がっていたのが注目された。「TAD-R1」は現在の国産スピーカーでは、サイズ、重量、価格とも最高レベルにある製品だと思われる。なにしろ、横幅554ミリ、高さ1,293ミリ、奥行き698ミリで、重量は1台150キロ。価格は税込6,300,000円(ペア) 。
「TAD-R1」と参考出品の2ウェイ機はよく似ているが、大きさはかなり違う。はたして価格は? |
こういう製品は、かつてのオーディオフェアや輸入オーディオショウでは、特に珍しいものではなく、普段はお目にかかることのできない大型システムに、会場でお目に掛かるのが楽しみで、そのデモ再生に聴き惚れ、いつかは手に入れたい、と憧れたものであった。しかし、オーディオ機器が夢見るだけのものであっては意味がないので、各メーカーは社の威信を懸けてハイエンドシステムを作り上げると同時に、多くの人の購入可能範囲に納まる製品を開発してきたのである。
「TAD-R1」は理想的な設置場所と適切なアンプに恵まれれば、価格やサイズを思わず忘れてしまう、夢のような素晴らしい音の世界を手に入れることができる。しかし、夢は間もなく覚めるのが現実というもの。夢をそのまま現実にできる幸運はめったにあるものではない。そこで、何とか「R1」の再現力を生かしながら、小型低価格化を図って生まれた製品が参考出品されたのである。まだこの小型機がいつ発売されるのかは公表されていないが、1日も早く発売にこぎつけてもらいたいと思う。
期間中高い人気を集めたソニーのポータブルレコーダー「PCM-D1」と「PCM-D50」 |
ソニーも先行発売された、3ウェイフロア型の本格実力機「SS-AR1」のジュニアモデル「SS-AR2」を送り出している。こちらは、税込1,785,000円から1,260,000円(ペア)と、あまり大幅な低価格化ではないが、今後さらに安価な小型モデルが登場することを期待したい。なお、ソニーはオーディオと別に、ビジュアル機器のブースも設けて、自社のアンプ、スピーカー、プロジェクターによる映像とサラウンドサウンドのデモンストレーションを行なっていた。またさらに、生録会でも高い人気を集めた高性能ポータブルPCMレコーダー「PCM-D1」と「PCM-D50」は別ブースに展示、デモも行なわれた。
大メーカーといえば、忘れられないのが社名を松下から変えたパナソニック。こちらはピュアオーディオの出品はなく、薄型テレビ「VIERA」とDVD・ブルーレイディスクレコーダー「DIGA(ディーガ)」をはじめ、ホームシアター用の製品に集中して出展していた。かつてのテクニクス製品を知る者にとっては少し寂しい気もするが、今後に期待したい。
ソニー、パナソニックの出品傾向を見ると、どうやら「ピュアオーディオは中小のメーカー、大メーカーはビジュアル機器」という役割分担の傾向がさらに進んでいるようだ。しかし、ブルーレイディスクには高画質の映像とともに、超高音質規格の音楽を非圧縮で記録できる能力があるのだから、プレーヤーやレコーダーがCDからブルーレイディスクまですべてを読める「ユニバーサル機」なら(ほとんどの製品がその方式に向っている)、もうオーディオ機器とビジュアル機器との垣根はなくなったと同じことである。大型テレビに、高性能スピーカーやアンプを組み合わせて、最高級の音質と高画質を同時に楽しめるという、本当の意味での「A&V」の世界が実現するのである。もはや、オーディオとビジュアルは、特に区分けする必要はなくなっていると思う。
なお、専門メーカーの出品作については、「A&Vフェスタ2009」の会場レポート記事をご覧ください。
フォステクス「GX100」の詳細は:フォステクス カンパニー |
TADについての詳細は:テクニカル オーディオ デバイセズ ラボラトリーズ |
ソニー「PCM-D1」と「PCM-D50」の詳細は:ソニーマーケティング |