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2009年3月11日 15時00分

中国ばかりが"丸儲け" 巨大化する排出権ビジネス(前編)

"夢の環境派チーム"と絶賛される閣僚
を揃えたオバマ。だが、その裏では、
環境バブルを目当てにした利権屋たち
が群がっているとの話も。

 ここ数年来、経済誌や専門家の間では、「次のバブルは環境ビジネスで起こる」という予測が広まっているが、昨年末ぐらいから、ついにバブルの序章が始まったとの見方が強まっている。その理由は、まず何よりも、今年1月に誕生したオバマ新政権にある。各メディアでも大きく報道されたが、オバマが大統領に就任してまず打ち出したのが、環境分野に予算を重点配分して雇用拡大を目指す「グリーン・ニューディール政策」。これまでのブッシュ政権では、温暖化防止の取り組みを「経済成長を妨げる」と反対していたが、それに真っ向から対立する方針である。

「温室効果ガスについての排出量削減義務を定めた国連条約である京都議定書からもアメリカは離脱するなど、『環境はお金にならない』と一貫していたブッシュに対して、オバマは環境一辺倒。ただ、一部米紙では、政権内部に環境利権に巣食う人脈が入り込んでいるのでは?という指摘もある。 ブッシュは石油、オバマは環境というわけです」(大手紙経済記者)

 そんな環境政策の中でも、とりわけ注目されているのが、「排出権取引」である。排出権とは、二酸化炭素などの温室効果ガスを削減した企業や国が、削減分を売却できる権利のこと。この取引の中心となっているのが、地球規模で温室効果ガスの排出量を削減しながら、裕福な国から貧しい国へお金を移動させる、クリーン開発メカニズム(CDM)と呼ばれる制度である。一般の認識通り、温室効果ガスを排出する権利を、先進国が発展途上国からお金で買い取るビジネスである。世界の市場規模は、08年時点で約10兆円に到達したといわれているが、その現状はどうなっているのだろうか? 日本における排出権取引仲介業のパイオニアであるナットソース・ジャパンの代表取締役・?橋庸夫氏はこう語る。

「排出権取引は、京都議定書で設定された温室効果ガス排出枠まで先進国が削減できないときに、柔軟性をもった補完的なシステムとして生まれたということを忘れてはなりません」

 排出権取引の多くは、「キャップ・アンド・トレード方式」というやり方で行われている。国や行政単位、企業別に排出量の上限(キャップ)を定め、その上限よりもオーバーした分を買う、あるいは減らした分を排出権として売るのである。建前上、排出権は先進国同士でも売買できるが、流れとしては、温室効果ガスの削減義務を負っていない途上国で排出権を仕入れ、先進国で売ることが多い。

●中国にとって環境問題は絶好のビジネスチャンス

 現在、世界で取引されている排出権の半分以上は中国から仕入れられていると推測されている。しかしご存じのように、中国は、多くの公害問題を抱え、05年実績でアメリカに次ぐ、世界第2位の温室効果ガスの排出国。京都議定書締約時の97年には、「途上国」と見なされ、温室効果ガス削減義務を負わなかったものの、その経済成長からいっても、もはや「途上国」とは呼べない中国が保有する排出権を別の国に売っている、という現状には、果たして整合性があるのだろうか?

「温室効果ガスの削減義務を誰が負うのか? という問題は非常に難しいんです。先進国は電気・エネルギーの使用量も膨大ですし、1人当たりのGDP(国内総生産)を見ても、途上国との間には大きな開きがあります。中国にしても、1人当たりのGDPはまだまだですし、電気がない地域もありますし。ただ、中国とインドをめぐっては、削減義務のある先進国と義務がない途上国という区切りではなく、両者の間に別のステージを設けて、そこに組み込んだほうがいいのでは? という議論があるのは事実です」(同)
(後編へ続く/文=黄慈権/「サイゾー」3月号より)



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