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きょうの社説 2009年3月15日
◎大学に転入届窓口 「学生市民」増やす足がかりに
金沢市が入学シーズンに合わせ、各大学に初めて開設する転入届窓口を、「学生市民」
の確実な増加につなげたい。市はこれまでもチラシの配布などで新入生に住民登録を呼びかけてきたが、大学キャンパスに臨時窓口を設ければ、学生へのアピール効果が期待できる。この試みを継続し、実績を積み上げていけば、住民登録は入学手続きの一環という認識を広げることにもなろう。市外からきた学生たちに「地元意識」を促すには最初が肝心である。せっかく職員が大 学まで出向くなら、単なる事務的な手続きにとどまらず、生活上のさまざまな相談に応じ、金沢が学生を大事にし、学生の力に期待していることを伝える機会にもしたい。 市が出張窓口を設けるのは、金大、金沢美大、金沢学院大、北陸大、金沢星稜大、北陸 学院大、金沢工大の七大学で、入学定員の合計約四千七百人のうち、六割程度が県外出身とされる。市は大学ごとに数日程度、出張窓口を開設し、転入届を受け付ける。 住民登録を親元に残したまま入学する学生は少なくないとみられるが、異動届は住民基 本台帳法で定められており、自治体が積極的に住民登録を働きかけるのは、むしろ当然のことである。 金沢では学生と地域が雪かき協定を結んだり、大学ゼミやサークルなどが町家の活用、 中心市街地でのライトアップ実験、アートプロジェクト事業への参加など、地域づくりや市政の課題に取り組む動きが広がっている。イベントや祭りなどでも学生の力は頼りになる。 金沢は「大学のまち」であり、「学生のまち」でもある。住民登録する「学生市民」が 増えれば、金沢と学生との関係も一層深まるのではないか。 大学での転入届窓口は、野々市町でも今年から金沢工大と県立大で開設される。そうし た自治体の動きに呼応し、大学側も積極的に協力してほしい。大学が地域貢献に力を入れるなら、住民登録の呼びかけもその一つだろう。 金沢市や野々市町で始まった学生の住民登録運動を、大学全体、さらには企業の転勤者 などにも広げていきたい。
◎海賊警備行動発令 外交支援活動も強めたい
ソマリア沖の海賊被害防止のため、自衛隊に海上警備行動が発令され、護衛艦二隻が出
発した。海自によるソマリア沖の船舶保護活動は、自国の船員らの安全と貿易立国のいわばライフライン確保に必要であり、海上交通路の安定を図る国連の一員として責任を果たすものである。本来なら、きちっとした法律に基づいてなされるのが望ましく、海賊対策に自衛隊の随時派遣を可能にする海賊対処法案を速やかに成立させてもらいたい。と同時にソマリア国内の政情、治安の安定を図る外交努力も強めたい。後方支援が主体だった自衛隊の海外派遣は今回、前面に出ての活動となる。派遣される 自衛隊員と海上保安官に敬意を表し、無事に任務を遂行するよう望みたい。ただ、その一方でソマリア沖の海賊防止活動には先の見えない不安やもどかしさもつきまとう。 海賊を生み出しているソマリアの内戦は、終結の見通しがまったく立っていない。その ため、際限のない自衛隊派遣を余儀なくされ、例えば今も続くゴラン高原PKOのように、やがて国民の関心も薄らぐ状況に陥ってしまう心配も否めないのである。 無政府状態のソマリアの国家機能回復は容易ではない。しかし、国際社会は傍観してい るわけにはいかない。日本政府はこれまで、国連の「人間の安全保障基金」を通してソマリア難民の保護や定住支援を行ってきた。こうした支援活動をさらに考えたい。 また、日本を含む国連主要加盟国は今年一月、海賊対策の国際組織となる「対海賊調整 センター」の設立を検討する報告書をまとめている。国連安保理非常任理事国の日本は、同センターの設立やソマリア安定化の国際的支援策づくりで主導的な役割を果たすべき立場にあると認識したい。 ソマリアの平和維持活動に部隊を派遣しているのは現在、アフリカ連合(AU)だけで ある。AU部隊の直接支援は困難としても、資源外交などの面で重視する対アフリカ外交とODAの強化は日本の国益にかない、ソマリアの安定にも寄与することになろう。
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