きょうのコラム「時鐘」 2009年3月15日

 スカートの下にズボンを履くファッションが女性に広がっている。古墳の埴輪と似ているので「はにわルック」というそうだ。初めは変だが、見慣れると違和感がなくなるから不思議である

古い建築の外観を残して、上に高層ビルを建てるのを「胴巻き保存」「こしまき保存」あるいは「かさぶた保存」と言う。名前からして野暮ったいが、東京丸の内界隈に多い。問題の東京中央郵便局はこの保存方式の拡大で決着した

富山県旧福野町出身で四高卒の吉田鉄郎が設計したあのビルは、日本の近代化を象徴した名建築であることは間違いないが「胴巻き」や「こしまき」で、吉田の建築デザインが生かされるかどうかは大いに疑問だ

金沢でも昭和40年代から相次いで名建築が消えた。南町の旧大同生命ビルなどは美しい彫刻の外壁だけでも残したいとの声もあったが実現しなかった。建物保存は時代と場所によって環境も違い、難しいものがある

東京中央郵便局は新旧合体どころか、政治的「妥協の産物」だろう。時間がたって見慣れても「つぎはぎ」の違和感が残る平成の愚作になる恐れは十分ある。