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世界的な金融危機と同時不況への対策を主要20カ国・地域の首脳が話し合うG20金融サミットが、来月2日にロンドンで開催される。その準備としてG20の財務相・中央銀行総裁会議が同じロンドンの近郊で開かれた。
経済規模で世界の85%を占めるG20が、当面の危機克服策で足並みをそろえられるか。そのために先進国と新興・途上国の利害対立を調整できるか。それが焦点である。世界経済の底支えに向けG20が一体感を強めることが、危機克服の前提になるからだ。
昨年9月のリーマン・ショックから半年。世界的な危機は、欧米大銀行の苦境による金融システムのマヒから、実体経済へと波及した。日米欧がそろってマイナス成長に陥り、デフレ懸念がますます深刻化しそうだ。
国際通貨基金(IMF)は国内総生産(GDP)の2%に相当する財政出動を各国に促した。米国もこれを強く支持している。いわば、ケインズ型の需要政策へ世界規模でいっしょに踏み出そうというものだ。各国が歩調を合わせられれば、輸出依存による貿易摩擦の回避に役立ち、保護主義の連鎖を抑える効果も期待できる。
ただ、この2%相当をすでに満たすのは米国や中国など少ない。欧州はユーロ圏16カ国の財務相会合で財政出動を当面は打ち止めとするなど、各国の思惑はなおまだら模様だ。
日本は、麻生首相が追加対策づくりを指示し、日米財務相会談で与謝野財務相が「2%超え」を表明した。だが巨額の政府債務を考えれば、単純な需要追加策をとる余裕はない。新しい産業や新市場を開く手助けをして民間需要を誘発する「内需の連鎖的拡大」をねらって、ストーリー性のある方策を考えねばならない。
G20の中期的な課題としては、世界的な金融規制の立て直しが重要だ。これまで監視の目が届かなかったヘッジファンドなどの市場参加者をどう網羅して世界的な監督体制を構築するか。論点を早く詰める必要がある。
存在感を増す新興国や途上国は、先進国主導の議論に加わる見返りに、IMFなど国際機関での発言力の拡大を強く望んでいる。これも進展させないと、G20の一体感をつくれない。
G20が国際経済の問題解決の場として機能するには、新興国などが求めるIMFへの出資比率アップを早く実現するといった条件整備が欠かせない。日本は米国に次ぐ第2位の出資国として、調整に奔走すべきだ。
昨年11月にワシントンで開かれた第1回G20緊急サミットは、首脳たちが一堂に会し、それぞれの主張を束ねるだけで何とか格好はついた。2回目以降は実質的な前進が求められる。
議長であるブラウン英首相がこれからどうさばくか。手腕に期待する。
フランスは、世界最強の軍事同盟とされる北大西洋条約機構(NATO)の一員だが、作戦を立案し指揮する軍事機構からは脱退していた。
この基本政策を転換し、軍事機構に完全に戻る。サルコジ大統領がそう表明した。43年ぶりの復帰である。
脱退は66年、ドゴール大統領の時だ。東西冷戦の中で自らの核戦略を堅持し、独自外交を行うためだった。
だが冷戦が終わり、仮想敵のソ連は崩壊して、状況は激変した。90年代、NATOは域外の旧ユーゴ紛争の火消しのために介入し、フランス軍もこの作戦に加わった。今はアフガニスタンに3千人近い部隊を送っている。
こうした経緯を見れば、フランスが軍事機構に復帰しても、軍事的な意味合いはさほどではないだろう。ただ、政治的な意味は小さくない。
NATOは今年、創設60周年を迎える。4月初め、全加盟26カ国の首脳が独仏国境の街で一堂に会する。
治安が悪化するアフガンの情勢にどう対応していくのか。ロシアにはどう向き合い、国際テロとはどう立ち向かうのか。そうした課題解決のため、新たな戦略づくりが始まる。
いわば米欧同盟のあり方を再び問い直すわけだ。そこに積極的に加わることで、フランスは国際社会での発言力を高めようというのだろう。
サルコジ大統領の復帰表明に、国内では「フランスの独立性が失われる」という批判も起きている。だが、フランスの復帰で欧州が結束を強めることができるならば、NATO内で欧州の発言権が強まる可能性がある。
これまでは、米欧は対等とされながらも、現実には米国主導でNATOが運営されてきたからだ。
その同盟の重心を少し欧州側へ動かそうとする試みはまた、国際社会が直面する問題の解決に欧州がより大きな責任を引き受けることでもある。
問題は、それにふさわしい実力と政策を欧州が持っているかどうかだ。
米欧間には政治・外交のパワーの差だけでなく、軍事力でも大きな格差がある。アフガンへの部隊増派には欧州の世論に慎重論が根強い。解決を迫られる地域紛争もたくさんある。
そうした問題を解決するために欧州諸国は、紛争調停や住民保護を含め、軍民両面でその能力を高めていく必要がある。紛争地に部隊を派遣することでは欧州連合(EU)とNATOとの役割調整が急務となるだろう。
オバマ米政権には欧州との協調姿勢が目立つが、アフガン戦略やNATOの東方拡大といったNATOの抱える懸案について、米欧間の激しい綱引きが行われるに違いない。
その行方は、日米同盟のあり方にも大きな影響を及ぼす。米欧同盟に起きる変化を注視しなければならない。