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経済

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ポール・クルーグマンの慧眼は凄い!

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 昨年、ノーベル賞の経済学賞を受賞したポール・クルーマン。

 そのクルーグマンの話題の著作「嘘つき大統領のデタラメ経済」を今、読んでいるんですが、ノーベル賞の経済学賞を取る学者がどんな難しい事を書いているかと思いきや、あに図らんやこれがかなり面白い。

 かの著名な「ニューヨーク・タイムズ」に10年間ほど連載したコラムを編集したそうですが、現役大統領のブッシュさんを、もうボロクソです。
 本のタイトルにもあるように“嘘つき呼ばわり”。

 時が流れ、彼の言っていることが真実だったことは実証されたわけですし、ノーベル賞も受賞するなど、我が世の春と言ったところでしょうか。

 とは言え、ブッシュ大統領は8年間、世界最大の帝国の大統領だったわけですから、その大統領をボロクソに言うことがそう容易い事だとは思えません。
 彼の強靱な信念と学識、そしてクルーグマンの学識と見識を信頼してコラムを任せた「ニューヨーク・タイムズ」の見識こそが評価されるべきでしょう。

 「慧眼」。“この世の空であるという真理を悟る能力を持つ目”

 彼の著作を読んでいてクルーグマンという人こそ「慧眼の人」という呼び名が相応しいとつくづくそう思います。

 彼が論じているのは私などが日々、頭を悩ます生活費やローン費用などの範疇を越えたマクロ経済ですが、アメリカのブッシュ政権が財政黒字だったクリントン政権を引き継いでから、あれよあれよという間に財政赤字にした過程をリアルタイムで指摘し批判しています。

 それが凄いですよね。誰でも後になれば結果論で言えますが、反撃をものともせずに批判するその姿勢は、経済学者と言うよりも“真のジャーナリスト”と呼ぶべきかも知れません。

 また、彼は10年前の日本に対しても今から思えば正に“その通りだ!”と膝を打つような指摘もしています。

 そんな中で、2001年当時に小泉政権の“いい加減さ”“危うさ”をいち早く指摘しているコラムがありましたのでご紹介します。
 ちょっと長文ですが写します。

 このコラムこそ正に「慧眼」です。



「嘘つき大統領のデタラメ経済」
 A LEAP IN THE DARK 闇の中へ飛び込んだ日本経済
(ニューヨーク・タイムズ2001/7/8)
『私は日本に数日滞在し、企業の経営トップや官僚達と意見を交換してきた。ある意味、彼らについてもっと否定的なことが言えたらいいのにと思う。なぜなら、企業のトップがビジネスの現実から明らかに乖離していたら、あるいは官僚が頑固で愚かであったら、日本経済の病は根の深い欠陥を持った社会的、経済的システムの帰結である、と簡単に片付けることができただろう。
そして、そんなことはアメリカでは起こりえないと言ってしまえたに違いない。

 ところが私が話しをした人々の大部分は情報に精通し、道理をわきまえているに思えた。それどころか日本人は景気がよかった時よりも、現在のほうがはるかに筋の通ったことを言っているのである。十五年前、アメリカ人と筋の通った議論をすることは難しかった。民間部門のエコノミストですら、政府の政策については、たとえそれがどんなに愚かなものであっても、避難したがらなかった。いまになって本当の意味での意見の交換が出来るようになったのである。

 だが、私は日本の状況に対してあまり良い感情を持てないでいる。

 もし善意と情熱だけでマクロ経済の問題が解決できるのであるなら、景気回復は間近であろう。小泉純一郎首相は、前例のないほど国民の大きな支持を受けて政権を手にし、それによって野心的な「構造改革」を実現しようとしてきた。小泉首相は、改革が成果を上げるまでの数年間は痛みを伴うと明言しているにもかかわらず、国民の支持率は依然として非常に高いのである。

 しかし、「構造改革」というキャッチ・フレーズが本当は何を意味するのか聞いてみると、疑問が沸いてくる。

 いままでのところ、その言葉には、主に二つの意味があるらしい。
 一つは、銀行に強引に不良債権の処理をさせることであり、もう一つは、雇用を確保するために毎年行われてきた、巨額の公共事業を縮小することである。
 この二つの政策は、まったく理に適ったものである。遅かれ早かれ、日本の銀行は財務内容を正直に報告しなければならなくなるだろう。日本の公共事業プロジエクトも、非効率と言うだけでなく、巨大な腐敗の温床となっている。

 とは言え、ここにこそ問題が存在する。
 日本経済が現在直面している明確な危機とは、非効率性ではなく、十分な需要がないことなのである。すなわち当面の問題は、資源を効率的に使っていないことではなく、持っている資源を十分に活用できないところにある。

 小泉改革には、そうした問題をさらに悪化させる可能性がある。

 銀行が債務不履行に陥った企業を倒産させる時、また不要なダムや道路の建設を政府が中止する時、直接的な結果として失業が増える。景気のいい時なら、企業の倒産や、公共事業の中止で解雇された人々は、すぐに他で職を見つけることができた。
 しかし、不況が長引いている経済下では、失業した労働者は職を見つけられないのである。
 そして失業者は商品を買わなくなるので、経済はさらに悪化することになる。

 では、どうすれば景気回復の展望は開けるのであろうか。この質問を、小泉政権の経済政策の策定者である竹中大臣にぶつけてみた。

 大臣は、アメリカではよくあることだが日本では珍しい、政界に転身した大学教授であり、人気のある経済評論家である。大臣の名誉のために言っておくと、彼は問題を曖昧にしたり、こまかしたりはしなかった。彼は、自分の政策が「供給サイド」であることを認めていた。
 すなわち、直面しているのは国民が十分に消費していないという「需要サイド」の問題であるというのに、竹中大臣は日本経済の効率化を図ろうとしているのである。それにもかかわらず、彼は改革は結果手kに需要サイドをも改善すると主張していた。
 消費者は経済の長期的な見通しが良くなったと気がつけば、財布の紐を緩めるだろう、と彼は力説した。また、さらなる改革、つまり主に規制緩和と民営化を進めることによって、新しいビジネス機会が生まれ、それが設備投資を促進せるだろうと主張した。

 そうかもしれない。
 しかし、その政策は、暗闇の中で飛び込むほどに無謀に思える。すなわち、効果があるだろうという期待から取られた政策であって、効果があると信じるに足る根拠があって取られた政策ではないのである。
 もし金融政策をコントロールしている日本銀行が同じように大胆に動いて支援したら、この政策が奏功するチャンスは大きいかも知れない。しかし、日銀の態度は小泉首相の姿勢と逆のように見える。彼らは、効果があるかも知れない政策を、効果がないかも知れないと恐れるあまり、実行する気がないようだからである。

 小泉改革は成功するのであろうか。

 私は成功することを願っているが、既に述べたように、この改革対しては良い気持ちを抱いてはいない。小泉政権の暗黙のスローガンは「改革か、さもなければ破滅か」だが、実際の結果が「改革と破滅」となる危険性は高い。』


 繰り返しますがこの論文は2001年7月8日に書かれたものです。

 8年前、既にポール・クルーグマンは小泉純一郎元総理と竹中平蔵大臣が、“自分のやりたい改革はするが、国民の生活は破滅的な打撃を与えるだろう”と予測していたのです。
 感心しました。

 一方、小泉政権の経済政策の旗振り役だった竹中さんが最近頻繁にテレビ出演しています。
 そして、「今の格差の問題や経済危機は、構造改革を徹底的にやらなかったからであり、今の経済不況は私の仕事と何の関係もない」と饒舌に自己弁護を繰り返しているようです。

 先日、TBSの「久米宏のテレビってヤツは!?」でもそうでしたね。

 多くのキャスターやコメンテーターは竹中さんに伍して彼の経済政策の失敗を指摘する知識も見識もありません。
 ですからまるで「ああ言えば上祐」の様に饒舌に語り、まるで「円天の波会長」の様に自信たっぷりに語っても何の反論も出来ません。。

 もし可能であれば、クルーグマンさんをゲストに迎え竹中大臣の失政を議論する討論番組をやりたいものです。

 私は個人的に竹中さんを好きではありません。というより、嫌いです。

 その理由は、あんなに喋くりの多い人間は信用できない、という個人的な信条からと、学者から何の苦労もなく参議院議員になりながら、投票した人達をあざ笑うかのようにさっさと議員辞職している姿勢が許せないからと、他にも大臣在任中に不可解な言動があるんですが、本ブログでも記事にしています。(http://blogs.yahoo.co.jp/yuushi2011/8412974.html

 それにしてもポール・クルーグマンの「慧眼」には感服しました。

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小泉と竹中は許せませんね。面白かったです。傑作

2009/2/7(土) 午後 10:35 [ pan ]

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構造改革はまちがいです。「小さな政府」「規制緩和」「新自由主義」はすべて、新古典派の考えです。もう金融資本主義の堕落によって崩壊しました。

2009/2/15(日) 午後 11:22 渡部 あつし

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