日本画家の平山郁夫さんは東京芸大の学長時代、入学式でよくこう話した。「志を高く持って、くり返しチャレンジせよ」と。
「チャレンジを継続することによって、鍛えられていく。自分の色を確立するためには、多くの経験を積むことです」(自著「ぶれない」)ともアドバイスしている。
若手美術家にそんな羽ばたくチャンスを与える「秀桜基金留学賞」の三回目の授賞式に出席した。国際的美術家の高橋秀さんとコラージュ作家の藤田桜さん夫妻が、私財一億円を投じて創設した全国公募の賞だ。
五年前、四十一年間過ごしたローマから倉敷市の沙美海岸に居を移した夫妻。情熱を注ぐのは、若い世代の創造の芽をはぐくむ支援活動と倉敷からの美術文化発信だ。
留学賞は毎年三人まで選び、一人三百万円を提供する。留学期間は一年未満。賞には「海外での生活体験を通じて日本を見つめ直してほしい」との高橋さんの熱い思いがこもる。
「可能性をのばしたい」「価値観の違いを感じてきたい」。今回の三人の受賞者からは意欲的な抱負が語られた。留学を経験した第一回受賞者からは「興味の幅が広がった」「自分の中に変化が感じられた」と確かな手応えも報告された。チャンスをものにした若手作家たちの創作活動の新たな展開が楽しみだ。