きょうの社説 2009年3月14日

◎地方の有料道路 能登、白山の料金割引も必要
 高速道路料金が今月二十八日から大幅に引き下げられるのに伴って、能登有料道路や白 山スーパー林道、富山県内の能越自動車道の有料区間など、地方の有料道路の割高感が台頭するのは避けられない。「千円で走り放題」の北陸自動車道や東海北陸自動車道沿線に注目が集まり、能登や白山ろくなどは、相対的に不利な立場に置かれるだろう。

 国土交通省は、そうした地方の有料道路について、料金引き下げを後押しする検討を始 めたが、この助成をぜひとも実現させたい。石川県は昨夏、自家用車などを利用し、能登地域の宿泊施設で一泊した観光客に対して片道分料金に相当する通行券を贈るサービスを実施した。国の助成と併せてもう一歩踏み込んだ県独自の割引制度を検討してほしい。

 都府県や政令市が管理している道路公社は全国に四十二ある。国は、自治体を経由して 公社の料金引き下げを助成する考えのようである。石川県の場合、昨年の夏休み期間に、能登地域の宿泊施設で一泊した観光客に対し、県道路公社が発行する「みちカード」をプレゼントした。白山スーパー林道では、加賀温泉郷と白山ろくの宿泊者を対象とした通行料半額キャンペーンを実施し、今年は供用中の全期間に拡大されることが既に決まっている。

 昨年までは、こうした半額キャンペーンもそれなりに効果があっただろうが、千円で高 速道路が走り放題となる「価格破壊」の前では、お得感がかすんでしまう。遠方からのドライブ客は、千円で走れる範囲でコースを組もうとするはずだ。有料道路への割引助成の財源には、道路特定財源の一般財源化に伴って創設される「地域活力基盤創造交付金」を使うことも可能なのではないか。

 富山県の場合、北陸自動車道の「小矢部・砺波ジャンクション」から「氷見インター」 の約二十九キロ区間のうち、富山県道路公社が管理する約十四キロの有料区間は、千円で走り放題の対象外になっている。現状のままでは、氷見や七尾方面への客足が鈍る可能性がある。割引対象区間に加えるよう国への働きかけを強めたい。

◎クローン牛・豚 当分は表示の義務化を
 体細胞クローン技術でつくられた牛と豚、その子孫の食品としての安全性を検討してき た内閣府の食品安全委員会は答申原案を公開した。さらに約一カ月かけて国民から公募で意見を聞き、最終評価をまとめて厚生労働省に答申する。

 米国は昨年一月、先駆けて安全宣言に踏み切っており、日本でも今のところ危険性を示 すデータはないとされている。答申原案は「通常の牛や豚と同等に安全」とみなしている。が、ゴーサインとなったとしても、慎重を期して当分は表示を義務付け、消費者に選択の余地を与えるのが望ましい。

 平たく言えば、遺伝子の複製がクローンである。この技術には受精卵を用いる方法と、 体細胞を用いる方法とがあり、後者の場合、死産などの発生率が高く、その原因はまだよく分からないようだ。が、答申原案は体細胞クローンの牛について「生後六カ月を越えると、通常の牛と同様に健全に発育する」とし、食用としての安全性に問題はないとみており、豚も同様としている。

 流通の可否については安全委の最終評価を基に厚労省と農林水産省が判断する。農水省 は消費者や生産者の受け止め方も聞くなど安全面以外の検討も必要との見解だといわれる。感覚的に受け入れられるかどうかも無視できないということである。

 さらに牛海綿状脳症(BSE)が後から人にも伝染することが分かったように、安全だ とされても厳密な意味では「現段階では」ということである。クローン技術に問題はなくても、人に影響する遺伝的な病気や異常を持った個体から多くのクローン牛や豚が産出されれば、その肉や製品を食べることで被害が広がると指摘する食品専門家もいる。

 受精卵を用いたクローン牛はすでに流通している。人工授精と同じとされ、表示の義務 化が見送られ、任意に「Cビーフ」などと表示することになった。体細胞クローンの場合は大事を取って表示が不可欠といえる。優れた個体の量産技術だが、慎重さがよい結果につながるのである。