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【正論】拓殖大学大学院教授・森本敏 北朝鮮ミサイルの迎撃決断を

2009.3.13 02:56
このニュースのトピックス正論

 ≪米国の出方にかかわらず≫

 北朝鮮が1998年8月、日本に向けて発射したテポドン−1ミサイルは日本海と三陸沖に分かれて着弾した。北は後に人工衛星の実験と発表したが、人工衛星とは判別されなかった。2006年7月にはテポドン−2を発射したが、これは推進体の切り離しに失敗したらしく上昇途中で落下飛散した。今回また、ミサイルの発射準備中だが、北朝鮮の技術開発が進んでいるとすれば、今までより射程は大きいと予測される。

 ミサイルが発射台に据えられると、型式、発射時期、発射方向などが推測できる。アラスカに向かうとなれば中国・ロシアの上空、グアムに向かうとすれば韓国の上空を飛翔する。地球の自転を考慮すれば日本を飛び越え、はるか太平洋上に着弾すると考えるのが自然である。今回も北朝鮮は人工衛星の発射実験だと言っている。それは太平洋の公海上に落ちれば国際法上の問題はなく、ミサイル防衛で撃墜される恐れも国連安保理の制裁を受ける恐れもないと考えているためかもしれない。

 今回の発射実験はオバマ政権を牽制(けんせい)し北朝鮮の立場を有利にすることを狙いつつも、ミサイル開発計画を確実に進めようとする意図の現れであろう。とすれば米国の出方にかかわらず発射実験はすると考えるべきだ。空域確保のため韓国に民間機航行の安全を保証しない、と脅かしているのはその証左である。

 ≪首相の自覚を求める≫

 日米両国は今までと異なりミサイル防衛の態勢を整備しつつある。ただ日本を飛び越えて、はるか太平洋上に着弾する射程も射高も大きいミサイルには、日本海に配備するミサイル防衛搭載イージス艦では技術的に対応不可能である。日本やその周辺に飛翔するものは対応できるし、当然、撃墜するべきである。そうでないとミサイル防衛システムを配備した理由が説明つかない。

 現在、日米両国は情報収集を強化し、警戒監視に努めている。実際に発射された場合には、米国の早期警戒衛星から送られた情報を基に米本土の防空システムが弾道経路、着弾点などを計算し、複数のルートを経て日本に情報が伝達される。指揮系統に基づいてイージス艦やパトリオットが対応することになる。米国のミサイル防衛システムも決められた手順に従って同様の対応をするであろう。

 これだけのことを前提に、今後、とるべき対応と問題点を指摘したい。第1に、わが国の政治決断を急ぐべきである。ミサイル防衛は自衛隊法第82条の2項に基づき、防衛大臣が内閣総理大臣の承認を得て、指揮官に対処権限を委任する仕組みになっている。総理の承認がなければミサイル防衛は機能しない。この対処要領は、航空総隊司令官がイージス艦艦長やパトリオット部隊指揮官に下令し、飛翔するミサイルをわずか数分のうちに撃墜するものである。

 その手順は防衛省内で決められているが、これを有効にするためには空域をクリアにする必要もあるし、パトリオットミサイルの運用に必要な電波管制も必要となる。まだ総理の政治決断は下っていないが、時機を逸したのでは取り返しがつかない。

 ≪米韓との危機管理体制を≫

 第2に、日米間の運用上の調整を急ぐことである。米国はイージス艦を日本周辺に5、6隻配備し、海自も2隻の配備が可能だ。緊迫すれば、このうち最低2隻を日本海に展開させる必要がある。しかし、日米では指揮権が異なるため、司令部・部隊間の調整が不可欠になる。ミサイル防衛は日米が共通の対応をしなければ効果はない。日本だけが対応しなければ、その必要性が問題になり、米国だけが対応しなかったら日米同盟の信頼性という問題になる。

 撃墜率は高いと予想されるが失敗しても、技術開発途上なので改善すればよいだけの話だ。撃墜できればミサイル防衛の有効性を証明でき、北朝鮮のみならず周辺国への抑止効果も大きい。北にミサイル発射中止を求めるより、ミサイル防衛システムで撃墜する方がよほど、抑止効果が高い。

 第3は、速やかな危機管理対応である。ミサイルの経路予測にかかわらず、日本周辺での落下を想定して危機管理体制をとることは国の安全保障上、当然である。だが実際にミサイルを撃墜したり、発射後に制裁措置をとると、北朝鮮指導部にとって政治的打撃になる可能性があり、北がどのような対応に出るか予想がつかない。韓国や在韓米軍に軍事対応する可能性も排除できない。速やかに、日米韓の緊密な連絡調整と危機管理体制をとる必要がある。

 時間的余裕はない。国内は経済、政治の混乱期にあるが、国家と国民の安全を守ることは最優先でなければならない。政治指導者の自覚を強く求める。(もりもと さとし)

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