23区の2009年度予算案
重点施策、目玉事業を追う
【社会】強制退去問題 のり子さんだけ日本に 入管に意向両親は来月13日帰国2009年3月14日 朝刊
強制退去処分を受けた日本生まれのフィリピン人カルデロン・のり子さん(13)=埼玉県蕨市立第一中学一年=の一家は十三日、のり子さん一人を日本に残し、両親は来月十三日に帰国する意向を東京入国管理局に伝えた。入管は一家に来月十四日まで仮放免を延長し、収容していた父親のアランさん(36)を放免。のり子さんについては、在留特別許可を認める手続きに入る。 代理人の渡辺彰悟弁護士によると、のり子さんが中学校で勉強を続けることを優先。東京都北区に住む母サラさん(38)の妹夫婦が、蕨市のカルデロンさん宅に引っ越す予定だという。 両親はマニラ市内にある親せき宅に身を寄せる。帰国した両親に対して法務省は一定期間後、日本に数カ月の短期滞在ができるよう認める意向だ。 他人のパスポートで入国した両親が摘発され強制退去処分を受けたが、のり子さんが日本語しか話すことができず、フィリピンでの生活が困難なことから、一家で在留特別許可を求めていた。 入管は、悪質な不法入国であることや最高裁で処分が確定していることから、一家全員の退去を主張。その後、在留特別許可を求める約二万人の署名提出などを受け、のり子さん一人は認める意向を示す一方、十三日までに両親が自主的に帰国する意思を表明しなければ、十七日に家族全員を強制送還すると伝えていた。 ◆少女の願い届かず『また3人で住みたい』「母が二〇〇六年に逮捕され、初めて自分の立場を知りショックでした。大好きな日本で、勉強を頑張りたい。両親と離れたくありません」 家族三人で暮らしたいという思いを込め、のり子さんは十二日夜、森英介法相に手紙を書いていた。 父アランさんが九日に収容された後、母サラさんや代理人の渡辺彰悟弁護士らと相談したが、ぎりぎりまで結論は出なかった。十三日、アランさんと面会した後、午前十時すぎから三時間あまり、入管にあらためて思いを伝え、前夜に書いた手紙も渡したが、最後の願いも届かなかった。 「入管は柔軟に対応すべきだ」「法は守るべきだ」。カルデロンさん一家の処遇をめぐっては、さまざまな意見が渦巻いた。「日本は私にとって母国です。日本が大好きです」。のり子さんはそう応じてきた。 友人とダンススクールを開く夢は、どうしてもかなえたい。そのためには、日本で勉強を続けていくしかない。一カ月後に帰国する両親が見守る中、のり子さんは記者会見で語った。 「家族が離れ離れになることを考えられなかったので、すごく不安。またいつか、三人で住みたい」。時々、目を潤ませながらも最後まで気丈さは崩さなかった。 入管側は当初、来月十日の帰国を求めたが、八日にのり子さんの中学の始業式があるため、両親の滞在は十三日まで延びた。アランさんは「みなさん、応援してくれてありがとう」と深々と頭を下げた。
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