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蕨のフィリピン人一家不法滞在:両親帰国へ 悲痛な決断、同情の声 /埼玉

 ◇「同じ境遇なら自分も…」

 不法入国で国外退去を命じられ、長女だけが残るか、家族全員で帰国するかの判断を迫られていた蕨市のフィリピン人、カルデロン・アランさん(36)一家は13日、のり子さん(13)を日本に残すことを決めた。同世代の中学生や親たちからは、「同じ境遇なら自分も一家と同じ判断をした」「両親と離れ離れは可哀そう」との声が聞かれた。【町田結子、飼手勇介、鴇沢哲雄】

 「数年後に親が帰って来るのなら、私も一人で残る」。友達と下校中の行田市立忍(おし)中学1年の女子生徒(13)は「親の母国でも言葉が分からなければ、学校に通っても勉強できない。家に引きこもってしまう」と言い、のり子さんに同情する。だが別の女子生徒(13)は「自分なら親と一緒に帰る。両親といれば安心するけど親類と暮らすことになれば気を遣って大変そう」と話す。

 JR浦和駅前。中学2年の長男(13)がいるふじみ野市丸山の公務員、西脇正義さん(49)は「私が同じ立場でも、両親だけ帰国するという結論を出したと思う。中学生は自分の意思表示をしっかりできる年齢なので、日本に残りたいとの思いを尊重してあげたい」。

 中学1年の長男(13)がいるさいたま市浦和区のパート女性(42)は「私でも子供の思いを通してあげたと思う。のり子さんが幼いうちに、早く帰国すると結論を出していれば、離れ離れにならずにすんだのでは」と話した。

 カルデロンさん一家の地元蕨市。のり子さんの通う中学校近くで配達中の酒店店員(33)は「まだ中学生。できれば両親と一緒に生活させてあげたかった」。のり子さんと同じ中学に通う娘がいる女性(41)は「不法滞在は許されないけれど、のり子さんがフィリピンに行っても大変。日本で身近な人たちが何とか助けてあげてほしい」。JR蕨駅前にいた会社員の男性(38)は「不法滞在なので両親の帰国は当然だ。子供に罪はないが、法律は曲げられない」と語った。

 ◇「3人で残れず気の毒」--在留特別のタスクンさん

 08年3月に在留特別許可を受け一家3人で生活する川口市のトルコ国籍のクルド人、タスクンさん(33)は「日本語しか話せないのり子さんにとって国外退去はつらすぎる。両親は難しい判断を迫られたと思う」と話す。

 タスクンさんは不法滞在中の98年、フィリピン国籍の妻と知り合い、01年に長女が生まれた。04年にそれぞれの母国に強制退去を命じられ、処分取り消しを求め提訴。1審で敗訴したが、高裁で和解を打診され、在留特別許可が与えられた。

 タスクンさんは、カルデロンさん一家に「同じような境遇なだけに、家族3人で残れないのは気の毒。入管に従って子供を残して帰国し、数年後に再入国して家族で生活するイラン人やフィリピン人の友人もいる。両親も再入国して一緒に暮らせるのでは」と語った。【弘田恭子】

 ◇人道的配慮で在留の認可を--弁護士ら

 入管法に詳しい大貫憲介弁護士(第二東京弁護士会)は「入管は娘を一人残すか判断しなければ一家を国外退去させるぞ、と『脅し』で迫った。在留特別許可が大臣の裁量で認められているのは、杓子(しゃくし)定規ではない法の運用を期待されているから。脅しが適切な運用と思えない。人道的配慮と法のバランスを取り、入管は3人に在留を認めるべきだ」と話した。

 第二東京弁護士会は「子供の最善の利益に配慮がなされるべきだ。子供の権利が十分保障されない事態が生じているのは誠に遺憾だ」と声明を出した。

毎日新聞 2009年3月14日 地方版

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