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【社説】

『人工衛星』予告 孤立を深めるだけだ

2009年3月14日

 北朝鮮は周辺国の警告にもかかわらず、「人工衛星」の打ち上げを予告した。さらなる制裁を招くだけでなく、強く対話を求める米国との関係にも障害をもたらすことになる。

 オバマ米大統領は、北朝鮮のミサイル発射の動きについての危険性を強調したという。日本と韓国の政府も、「人工衛星」の打ち上げを中止するよう求めるとともに、厳しく非難している。

 こうした反応を予測したのだろう。北朝鮮は人工衛星「光明星2号」を四月四日から八日までの間に打ち上げる計画について、宇宙条約などに基づき国際機関へ事前通告した。

 しかし、二〇〇六年七月、北朝鮮がミサイルを連射した後、国連安保理は「ミサイル開発に関連するすべての活動の停止」を求める制裁決議を採択している。

 推進ロケットは性能的に弾道ミサイルと同じであり、今回は「テポドン2号」とみられている。さらに、核兵器開発の放棄を拒んでいる現状では、人工衛星と称しても容認できない。

 また、北朝鮮は日本列島を挟んで危険区域を設定した。日本上空を通過する可能性が高い。失敗したときの被害も心配になる。

 北朝鮮は、周辺国の理解が得られない以上、「人工衛星」の発射を中止すべきだ。

 今回の発射は、ミサイル技術の向上とともに、独裁体制の誇示が狙いのようだ。先に選挙が行われた最高人民会議の第一回会合が四月中旬に行われる。

 金正日総書記は再び国家最高のポストである国防委員長に選ばれる。新体制が発足するに際しての「祝砲」であり、健康悪化説でゆるんだ国民の忠誠心を取り戻す思惑があるのだろう。

 また、対外的には発足したばかりのオバマ政権に対する「揺さぶり」も狙っているようだ。

 オバマ政権は北朝鮮との対話を公約している。しかし、クリントン国務長官は先のアジア歴訪で「米朝関係改善には完全な核放棄が必要だ」と語り、核やミサイル開発に関して原則を重視する姿勢を示した。

 北朝鮮は、「発射」による米朝協議の開催と主導権確保を狙ったのだろうが、強硬手段は米国の反発を受けるし、逆効果だ。

 同時に、これまで以上の外交的孤立を招くのは確実だ。経済混迷とくに食糧やエネルギー不足はさらに深刻になり、肝心の足元が脅かされるに違いない。

 

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