23区の2009年度予算案
重点施策、目玉事業を追う
【社会】改訂副教材『心のノート』 『規範意識』『勤労精神』に重点2009年3月14日 朝刊
道徳教育の強化をうたう小中学校の新学習指導要領が四月から一部先行実施されるのに伴い、文部科学省は十三日、道徳の副教材「心のノート」の改訂版を公表した。「規範意識」「勤労精神」などを養うことに重点を置いている。 ノートは、二〇〇二年度から小中学生に配布。小学校の低学年、中学年、高学年用と中学校用の四種類あり、一斉改訂は初めて。 新たに加わった内容は、小学校低学年用の「してはならないことがあるよ」と題した規範意識の項目。「人のものをとってはいけないよ」「わる口を言ってはいけないよ」などの文言をイラストと並べた。中学校用も「一人一人が厳守すべきものがある」と掲げ、「ひとをころすべからず」などの福沢諭吉の教訓「ひびのおしへ」を紹介した。 小学校高学年用には「集団の一員という自覚」も。家族、学校、地球、この国などを切り口に、一例として日の丸を手にした五輪選手団の写真もある。 小学校低学年から「勤労精神」を培うための項目も加わった。さまざまな職業を紹介しながら、学校の当番や家の手伝いも「仕事」とした。同省は「家庭でも効果的に使ってほしい」としている。 約五百二十万部作製し、今月中に配布する。 不要論も根強い中で改訂された「心のノート」。教育基本法改正から始まった一連の教育改革を象徴するように、「規範意識」「勤労精神」が強調された。今春で導入から八年目を迎えるが、政治家、教員らの意見はいまも分かれる。 文科省が〇四年にノートの使用状況を調べたところ、小学校97・1%、中学校90・4%が「使っている」と答えた。一度だけ使った場合も含めており「実態はまちまち」(同省教育課程課)だ。 昨年八月、自民党の無駄遣い撲滅プロジェクトチームは、心のノートを「今のままなら不要」と断じた。効果の不明確さに加え、「使用義務がないものを国が作るのは無駄」「他の教材と同じく検定制度にすべきだ」などと指摘した。同省は「不要論の一因は、使用頻度のばらつき。活用しやすいよう、記述欄は発達に合わせて書き込む形に工夫した」と説明する。 ノートを使用する都内の公立中学校の男性教諭(45)は「視覚的で興味をひくし、記述欄は心の成長記録になる。(内容が)押しつけと言われるが、問題と思う点があれば、現場判断で飛ばせばいい」と話す。 「心のノート逆活用法」の著作がある伊藤哲司茨城大教授(社会心理学)は「ノートの内容は正論だからこそ、批判しにくい。子供たちを望ましい姿に誘導するソフトな形を取った“管理”だ。道徳教育は、教師の個性で『生き方』を見せるもの。正論や常識を疑い、多様な視点をぶつけ合うことも必要では」と指摘する。
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