任意保険に加入せずに交通死亡事故を起こした男性(34)が、自己破産により遺族への賠償金の支払いを免れるかどうかが争われた訴訟があり、13日広島地裁で和解が成立した。男性が20年間、被害者の命日に「弔慰金」として、毎年12万円ずつ遺族に支払う内容。裁判官が遺族感情に配慮し、「(男性が)自己の責任を再確認することが有益」として、長期にわたる異例の支払いを促す和解案を提示した。
事故は02年7月13日、広島市東区の県道交差点で発生。乗用車で赤色点滅信号の交差点に進入した男性が、黄色点滅信号で進行してきた専門学校生、亥下(いのした)佳孝さん(当時19歳)運転のオートバイと衝突。亥下さんが肺挫傷などで死亡した。
広島簡裁は、業務上過失致死罪で男性に罰金50万円の略式命令を出した。一方、遺族は男性に損害賠償を求め提訴。07年7月、広島高裁は男性に約3200万円の賠償を命じる判決を出した。男性は任意保険に加入しておらず、賠償金は亥下さんが加入していた保険の特約で支払われることになった。しかし契約上、遅延損害金の一部約500万円は支払われないままになった。男性が不足分を支払わなかったため、遺族側は東京地裁に申し立てをし給料を差し押さえた。
男性はその後、自己破産。遺族側が再度差し押さえをしたところ、男性は「破産で免責されている」として、差し押さえを認めないよう求める今回の訴訟を起こした。
破産法は、重大な過失で相手を死亡させたケースなどについては免責されないと規定。福田修久裁判官は「小額でも長い間かけて支払う方が、責任を再確認し、故人をしのぶことになる」と和解案を提示した。【樋口岳大】
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