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善光寺門前、古き良き銭湯【長野市】2009年03月13日
86 亀の湯(長野市) 善光寺の御開帳(4月5日〜5月31日)まで3週間余り。参拝の後で一風呂浴びるなら、善光寺に最も近い銭湯・亀の湯がお薦めだ。仁王門から約600メートル、歩いて10分ほどで着く。 開業は1918(大正7)年。3代目の主人、尾身秀郎さん(73)は「一番にぎやかだったのは戦後ですね」と振り返る。近所の人たちであふれ、参拝客のための旅館も併設していた。「昔は銭湯に通うのが習慣で、家に風呂がある人も来ていた。しばらく顔を見ないと、みんなで心配したものです」 浴槽はぬるめと熱めの二つ。地下にサウナもある。以前は朝風呂も人気があった。妻の至那(し・な)さん(73)が漬物や煮物をサービスし、朝風呂仲間の懇親会もできたという。 しかし、一日を通しての管理が大変で、朝風呂は15年ほど前にやめた。客足も当時は午後だけで300人を超えていたが、今は3分の1に。家族連れが少なくなり、至那さんは「子どもの声が聞けなくて、さびしくなりました」と話す。 それでも、銭湯ならではの雰囲気は残っている。夫婦が男湯と女湯の壁を挟んで呼び合ったり、顔なじみ同士が背中を流したり。 週2日通う、近所のイラストレーター高井綾子さん(32)は「家で入るより、気持ちがさっぱりします。一人暮らしなので、いろんな人がいると落ち着くし、知らない人にも自然に話しかけることができる。そんな場所は銭湯だけかもしれない。なくなってほしくないですね」と願う。 県公衆浴場業生活衛生同業組合によると、長野市内の銭湯は年々減り、現在は9軒だけ。亀の湯ですら昨年、湯を沸かすのに使う重油の価格が高騰したため、廃業を考えたという。尾身さん夫婦は「跡取りはいませんが、健康な間は続けていきたい」と話していた。 お二人の言葉を聞いて、古き良き銭湯が、できるだけ長く残ってほしいと思った。(渡部耕平) --------------------------------------------------------------------------------
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