スイスがタブー破る自国通貨売り介入、次は日本との見方も
[ロンドン 12日 ロイター] スイス国立銀行(SNB)は12日の金融政策決定会合で利下げするとともに、会合後の声明で外国通貨買い・スイスフラン売りの為替介入を行う方針を発表。
景気対策として自国通貨を押し下げるという、先進国の間ではタブーとされる措置に踏み込んだことで、今後、他国が追随する可能性があるとみられている。
世界各国の政府が保護主義という誘惑に抵抗しようとしているなかで、スイス国立銀行は、先進国の中央銀行としてはじめて、デフレ防止策の一環として、自国通貨を売る為替介入を実施する方針を決定した。
スイス中銀は、金利がゼロに近づく中、さまざまな政策の一部として介入を発表したが、この問題をかかえているのはスイスだけではない。
政策金利は世界中でゼロに接近しており、日本などの諸国は、政策手段がなくなった際にどうやって経済を支えていくのか、その方策を探っている。そうした国が今後、スイス中銀の事例にならう可能性がある。
INGフィナンシャル・マーケッツの外為戦略責任者、クリス・ターナー氏は「SNBは為替戦争で第1弾を放った。ゼロ金利に直面する諸国の間で、金融状況の緩和のために自国通貨を押し下げる介入を実施しても構わない、というムードになるのではないか」との見方を示した。
<次に介入するのは日本か>
アナリストは、SNBに追随して為替介入を行う可能性が最も高いのは日本、との見方を示している。日本は過去、円高局面でも円安局面でも、為替相場の変動を抑制するための介入を、主要7カ国(G7)の間で最も積極的に行ってきた。
FXアナリティクスのパートナー、デービッド・ギルモア氏は「SNBの措置がパンドラの箱を開けた形となり、他国も相次いで介入に踏み切るのか、見守る必要がある。特に日本に注目している」としている。
スイスほどの経済規模の国が市場に介入するのと、世界2位の経済規模を持つ日本が介入するのとでは、影響という点で大きな違いがある。
それでも、2008年10月に開かれた7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)では、日本の円売り介入を事実上容認する姿勢を示した。
日銀はすでに政策金利をゼロ付近に引き下げており、企業の資金繰り支援のために社債を買い入れている。さらに、輸出が低迷し、リセッション(景気後退)が深刻化するなかで、円高にも苦しめられている。
スイスフランは、金融危機が本格化した2007年7月から今年1月末までの間に、貿易加重平均ベースでおよそ10%上昇した。一方、円は2007年7月から今年2月末までに40%上昇した。
<ルビコン川を渡る>
スイス、日本に続いて、中国なども、為替介入を行う可能性がある。
ドレスナー・クラインオートのシニア外為ストラテジスト、マイケル・クラウィッター氏は「SNBの行動により、他国も競争力向上のために介入する可能性が高まったことは、言わずもがなだ」としている。
政策手段が枯渇し、雇用維持に対する国民からの圧力が高まれば、ルビコン川を渡るというスイスの決断に、追随する国も出てくるだろう。
NABキャピタルの市場ストラテジスト、ギャビン・フレンド氏は「中銀や政府は、国内問題解決に必要な措置をとるだろう」と述べた。
(ロイターニュース 原文:Swaha Pattanaik、Jamie McGeever、翻訳:吉川 彩)
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